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◆ 作家のお話。 ◆
 
  「赤い蝋燭と人魚」の事
    「赤い蝋燭と人魚」は自分が十代の頃、こんなものが書いてみたい、そう思わせた作品です。

  作者は小川未明。
  明治15年、新潟に生まれ、早稲田大学に入学。在学中は坪内逍遥や小泉八雲らの指導を受け、早稲田大学在学中に作家デビュー、明治43年26歳の時、日本最初の創作童話集と言われている「赤い船」という童話集を発行、純文学・プロレタリア作家&童話作家として活動していましたが、大正十五年「童話宣言」をし、以後純然たる童話作家として活動しました。
  初期の未明は注目を受けながら苦労が多く、32歳の時、長男を六歳で亡くし、また36歳の時、長女を12歳で失っています。長女の死と前後して鈴木三重吉氏が「赤い鳥」を創刊、この頃より児童文学作品の発表が多くなっていきます。

 「赤い蝋燭と人魚」は39歳発表、童話宣言は44歳の時の事です。以後昭和の時代を童話作家として生き、1961(昭和36年)5月6日、脳出血で倒れ、同月11日午後6時55分、79歳で死去するまで、童話を通して社会に語りかけられた方です。

  ぎょうせいの小川未明童話選集の一巻あとがきに水上勉さんが、「牛女」「赤い蝋燭と人魚」を読んで「こういう物語が書けたらいいなァ」という思いがした、と書かれています。水上さんと同じように未明の作品を読まれた多くの方が、自分も含めてこんな事を誰かに話してみたい、と思うのではないでしょうか。

  自分がこの作品に最初に触れたのは、おおかたの人と違い、アニメーションでした。
  1979年四月より放送された「日本名作童話シリーズ 赤い鳥のこころ」全26回のうちの第四回目、脚本、監修が木下恵介、後年ミラノ国際児童映画祭グランプリ受賞、文化庁子供向けテレビ用優秀映画奨励賞受賞、厚生省児童福祉文化奨励賞受賞、とアニメと言えばSFという当時の時世にさからったものすごい作品でした。

  放送を見た後、新潮文庫の小川未明童話集を買い、この方が「野ばら」「牛女」「殿さまのちゃわん」「小さい針の音」等を書かれた方だと知り、知らなかった自分がなんとなく悔しい?と思ったのを覚えています。

 「赤い蝋燭と人魚」の物語は、寂しくて暗く冷たい北の海に暮らす母人魚が、人の世界の美しさ、人の優しさや思いやりに憧れ、自分の子だけは幸せに暮らせるよう人間の暮らす町に赤ちゃんを産み落とします。

  人魚の赤ちゃんは町のお宮へ参る信心深い老夫婦に暖かく育てられる事になるのですが、成長し、娘となった人魚が、蝋燭作りのおじいさんの手伝いに蝋燭に絵を描いた事から、思わぬ方向へ進むのでした。

  未明は幼い子供を亡くしているからでしょうか、作品の中に子供を思う親の気持ち、母を慕う子の気持ちがどこかで出てきます。

  娘が絵を描いた蝋燭は不思議な力を持っていました。 その蝋燭を見ると誰もが買いたくなり、お宮に灯した燃えさしの蝋燭を身に付けていると、どんな暴風雨の中でも船が転覆する事も、おぼれる事もありませんでした。

  未明の作品に「牛女」というお話があります。このお話は幼い子を残し亡くなった牛女と呼ばれる母が、さまざまな形を取って子供の成長を見守るお話です。

  母は子供のしあわせを願い奇跡を起こしても守ろうとします。しかし、蝋燭の思わぬ奇跡が、人の心を変えてしまいます。蝋燭が売れる事を知った老夫婦はお金をもうける事を考えるようになり、人魚の娘は寝る間を惜しんで、蝋燭に絵を描きつづけます。そして娘は絵を描く合間に遠い北の海を恋しがって、涙ぐむ事もあったのでした。
 
  子を思う母の気持ちはどんなものなのでしょうか?

  毎日手が痛くなるほど蝋燭に絵を描き続けた人魚の娘、しかし老夫婦は南から来た香具師から、人魚は不吉と言われ、あろうことか人魚の娘を売ってしまいます。

  人魚の娘は不安におびえながら、最後の蝋燭に絵も描けず、赤く塗ってしまいます。

  嵐の夜、蝋燭を買いに老夫婦のもとを訪れる女がいました。老夫婦はぶつぶつ文句をいいながらも、その女に娘が最後に残した赤い蝋燭を売ります。

  その女は赤い蝋燭を手に取ってじっと見つめました。

  「牛女」では牛女の子供が、奉公先を飛び出し町からいなくなった後、息子を探して、町の中をさまよいます。
 
  赤い蝋燭を手にした女は老夫婦にお金を渡して消えました。そのお金は貝殻で、老夫婦は怒るのですが、その夜、大きな嵐が起こります。嵐はたくさんの船を飲み込み、夜が明けても沖は暗く、それ以後、お宮に赤い蝋燭が灯ると嵐が起き、人々は恐れおののいたのでした。
  
  アニメーション版では、人魚の娘の乗った船は沈み、娘は母人魚と北の海へ帰ります。

  「牛女」では町に帰ってきた息子は、自分を見守ってきた町の人に例を言い、リンゴの事業を始めます。 そして母の墓に何も告げずに町を出た事を思い出し、母の法要を行います。

  リンゴには夏のころ悪い虫がつくのだそうです。
  夏の終わりに、コウモリの群れが現れ、リンゴの木を守るように害虫を食べるのです。その中に一匹、大きなコウモリがあって、群れを率いるように飛ぶのでした。
    
  いわさきちひろさんは子供の描写を得意とする童画家です。彼女の最後の絵本は未明の「赤い蝋燭と人魚」でした。その絵本は未彩色の鉛筆画で、未完の絶筆となってしまっています。

    願いや気持ちは届いたのでしょうか?

   
   
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