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六月-海と水辺の物語。
 
  オタスツンクルと水の神。
 

 お話の中で河童はよく相撲を取るという特徴があるのですが、他にも相撲を取る精霊、妖怪があります。

 土佐ではシバテン(芝天狗)で、ほぼ河童と同じ行動で相撲を取るそうです。
 河童のように水の中でいたづらをするのではなく、河原に出てきて相撲を取り、相手の精神状態を異常にしてしまうのだそうです。

 また東北の山男(大人おおひと)は、相撲が大好きで、お前は良いヤツだといいながら、近ずいて来て、のせられると、いつでも相撲の相手をしなければならないのだそうです。そのうち家に押しかけて来て、餅を食わせろ、等と言って、うっかりもてなすと、食べる量が桁違いで、すぐに財産を失ってしまうそうです。


  「オタスツンクルと水の神。」
 

 オタストは砂原の広がる土地でした。
 そこにオタスツンクルという一人の男がありました。

 ある時、オスタツンクルは旅の商人から不思議な話を聞きました。

「遠く離れた山の村で、毎夜毎夜一人づつ死んでいく村があるのだ。私ははじめ村の者がからかっているのだと思っていたら、翌朝、隣の家の主が亡くなってしまった。わしは恐ろしくなって、その村を急いで飛び出して来たのじゃ。」

 その男は、西の山向こうを見ると、なにか寒けに襲われたのか、うつむいたまま、また東へと旅立っていきました。

 オスタツンクルは西の山向こうを見ました。そして弓と矢を持つと、斧を腰にぶら下げて、西の山へと旅立っていきました。

 西の山向こうのはるか向こうに、村がありました。その村は空き家ばかりで、家の中には風が駆け回るだけで、他には犬の声ひとつ、聞こえませんでした。村の北に沼があり、そこから冷たい風が吹いてきていたのです。

 オタスツンクルはやはり何か起こっているのかと、村の中を歩きました。そしてただひとつ、煙突から煙の出ている家を見つけました。

 その家の前に立つと、戸がギィッと開くと、老婆が出てきて、オタスツンクルを見ると、驚いたように中に入ってしまいました。そして、かわりにその家の主人か、老人が出てくると家の中に招きました。
 「中にお入りください、神のような人よ。」

 オタスツンクルは家の中に招かれると、年老いた夫婦に挨拶をして、座りました。

 すると年老いた夫婦もうやうやしく挨拶をすると、深いため息をついたのです。

 「神のようなお方、どうか私たちの話を聞いてください。
ある時から、私の村に不幸が訪れ、一夜に一人ずつ村の誰かが死んでいくようになったのです。村のものは恐れて、縁者をたよって逃げ出し、残った他の家のものは、すべて死に絶えてしまいました。
 今夜は私の家の者が死ぬ番です。今夜、私が殺されるのか、私の妻が殺されるのか、神のような人よ、どうか今夜、この家にお泊まりください。」

 オタスツンクルは答えました。
 「そんな話を聞いたので、わざわざ遠い所から尋ねてまいりました。私は眠らずに起きて見張りをしていますから、心配なさらずに、あなた達はおやすみください。」
  
 オタスツンクルは老夫婦を床につかせると、薄く平べったい石を拾って来て、お尻に当てて下帯でしばり、火の側にすわって、老夫婦の番をしました。

 夜半過ぎ、オタスツンクルがウトウトしていると、囲炉裏の火がフッと揺れ、冷たい風が吹き込んできました。そして、オタスツンクルの後ろに何かがはって来て、お尻にそっと手を伸ばしました。

 オタスツンクルはその手を掴むとぐっと引っ張りました。
 すると、頭がまるくはげた小さなものが、オタスツンクルを見て、おびえたように目を大きく見開きました。その小さなものは、慌てて逃げようとしましたが、オタスツンクルが手を掴んでいたため、手がびよんと伸びてしまいました。

 オスタツンクルは斧を持つと、ダンとその手を切り落としました。すると、その小さなものは、ギャーと声を上げながら、逃げていきました。

 手元には、小さな子供のような手がありました。こんなものが、なぜ人を殺すのか?と不思議に思いながら、囲炉裏端でウトウトしていると、夢の中に、さっきの小さなものが出てきました。

 「私はかっぱの頭でしたが、人のはらわたほどうまいものはないと聞き、一度ためしてみたのです。
 するとこれが本当にうまい。
 それから、私は毎晩一人づつ、尻からはらわたを引きずり出し、殺しては食べていたのです。
 神のような人よ。私が悪かったので、片手をもがれてしまったのです。
 お願いです、私の腕を返してください。これからアイヌの方には決して悪い事をいたしません。」

 オタスツンクルは、目を覚ましました。そして外に出ると、ぽ〜んと夜の闇の中に腕を投げたのでした。

 老夫婦は泣いてよろこび、よその土地に逃げていた村人は、噂を聞いて帰って来ました。
 村人達はオタスツンクルに、うんとご馳走し、背負えるだけの珍しい物を贈り、砂原の故郷へ見送りました。

 それからその村では、なんの心配も無く暮らしたと言う事です。

       オタスツンクルと水の神。


   
 

 精霊や異界のものとの交渉は、まず相手の力を認める事にあり、それが彼らからの厚意を得る事につながっていくのだそうです。

 誰でもが彼らに近づく事は出来ませんが、ある条件、何らかの条件を満たしたものだけが、彼らに近づく事ができ、彼らとの契約にそむかなければ、その人、その家の富となる、それが、客人、外からやって来る神々、精霊の特徴となっています。

 太平洋の島に伝わっているものには、これから神になる人間のお話があります。

 その人間は山に入って、組み打ちを一人で際限なくするのですが、その組み打ちは、見えないものが相手をしていて、その相手と仲良く遊んでいるのだそうです。そうしているうちに神懸かりとなり、一種の祭司になっていく、組み打ちはその過程なのだそうです。

 この一人の組み打ち、精霊や神々との相撲は、日本にもあり、伊予の大三島、そしてその近辺で「一人相撲」として、盆の終りの行事として行われています。

 河童=水の精霊は、異界からやって来て、富をもたらそうとしているのですが、いつの間にか、古い時代の精霊との付き合い方を忘れ、ただ、怖いもの、恐ろしいものとなって行ったのではないでしょうか。