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六月-海と水辺の物語。
 
  カッパの墓。
 

 八名郡山吉田村新戸の豊田家は元酒屋で、家が栄えている時は、裏の小川の権現淵で臼をつく音がしていましたが、今から百年ほど前、女がここで汚れ物を洗おうとした所、淵の岸に十歳くらいの美しい男の子がいて、水中に入って行きました。
 女はおどろいて、様々に祈りましたが、この時から臼をつく音が止み、淵は浅くなって、次第に家は傾いたと言う事です。

 これは現在の愛知県新城(新城)市に伝わる、ザシキワラシと考えられているお話です。
 このよく知られているザシキワラシが、いったいどこから来たのか?
 あまり知られていません。

  「カッパの墓。」
 

 秋田の雄物川にはカッパがいると言われていました。

 四月にまいたソバが伸びて、茎が赤くなる頃に山から下りて来て、九月の終わり、花が一面真白に咲くまでの夏の間、カッパはその川にいて、時が来ると山に帰ったのです。

 夏の間に川に遊びに行った子供は、カッパに尻から肝を抜かれ、何人も亡くなっていました。あたりの人々にはカッパは恐ろしいものだったのです。

 ある時、変わったカッパがおったそうです。
 仲間から離れ、一人子どもたちの様子を見たり、田んぼで働くおとうやおかぁ達を、見ていました。
 何が面白いのか、そのカッパは、村の様子が気になって気になって、しょうがないようでした。

 ソバの花が咲き、他のカッパは山に帰っても、花が咲き終わっても、そのカッパは山に返らず、ひとり川をすいすい泳いでいました。

 しかしそのうち、ススキは秋風に揺れ、雪国の冬があっという間にやって来てしまいました。

 カッパは川からあがると、ブルブルッと身震いしました。

 空からはハラハラと雪が落ちてきました。カッパが、ぼ〜っと空を見ていると、雪は頭のお皿の上に降りつもり、頭がキ〜〜〜ンとなりました。

 カッパは驚いて走り回り、沼の蓮の葉の下に潜り込みました。
 雪は葉の上につもり、重さに耐えられなくなるとドサッと落ちましたが、それでも頭の上に雪が積もる事はありませんでした。

 カッパはしばらくそこに住んでいましたが、蓮の葉はいつの間にか枯れて、もうそこにも住む事が出来なくなってしまいました。

 「困ったのう。いつ、この雪はやむんじゃろうか?」
 カッパが恨めしそうに空を見ていると、沼のほとりの和尚さんが声をかけました。
 「そこのカッパっこ、お前なして一人でおるのじゃ?どうしてみんなと一緒にいかなかったのじゃ?大変な事になっておるのじゃないのか?」
  カッパは和尚さんを見ると驚いて、沼の中にバシャンと飛び込んでしまいました。

 和尚さんは驚いて呼びました。
「おぉ〜い、カッパ。 わしは怖くないぞぉ〜〜〜。困ったら、たずねてくるんじゃぞぉ〜〜〜。」
 和尚さんはカッパがいつ来ても良いように、山門を開けて待つ事にしました。

 それから、和尚さんは沼を見ては、カッパはどうしておるのかのう?と考えていましたが、カッパはと言うと、和尚さんを見ると、どうにも怖くて、怖くて、沼の底にじっとしているのでした。

 ある日の事、冬の大嵐がやって来ました。風が木々をなぎ倒し、雷がゴロゴロ鳴りました。カッパが震えながら空を見ると、突然、雹がバラバラと降ってきました。

雹はカッパの頭の皿を叩き、割ってしまいました。
「ひっ!」
カッパは頭から血を流しながら、沼にもぐりました。すると沼の水は、割れた頭にしみて、痛くて痛くて、たまりませんでした。
カッパは陸へと飛び出しました。
すると今度は、空から雹がカッパをバラバラと打ちました。
カッパは逃げる所も無く、だた走り回りました。
そして、ついにバタッと倒れ動かなくなり、雪がしんしんとカッパの体を覆っていったのでした。

それから何ヶ月かたった、ある春の日の事です。寺の和尚さんは、ミイラのようになって死んでいるカッパを見つけました。
「おお、しばらく見ないと思っておったら。こんな所で死んでおったのか?」
和尚さんは雄物川の見える山の中腹にカッパを埋めてやりました。

「カッパや、ソバの茎が赤くなる頃、お前の仲間が川に帰ってくるぞ。ここなら、眺められるからの。」
そう言って、手を合わせました。

 それからと言うもの、雄物川でカッパに肝を抜かれるものは、いなくなりました。
 そして、今では河童の墓がどこにあるのかも、わからなくなったと言う事です。

       カッパの墓。

   
 

 岩手県、土淵村の阿部家のザシキワラシは、フチサルと言うとされ、この淵猿は河童をさすのだそうです。

 また綾織村、日影の佐吉殿という家のザシキワラシは、傍らにある「猿が石川の佐吉殿の淵」という淵から出てきた河童で、よく相撲を取ったと伝えています。
 同じ金沢村の、カジヤ、大長谷、小笠原家の本家ヨコイチと言う家のザシキワラシは、川から来たと伝えています。

 稲作でもっとも重要とされるものは水。

 その水源には水神がまつられ、その神様から童子を授かり富貴を得る、実りを得る。

 その童子が河童であり、ザシキワラシである、という事なのかも知れません。