お話歳時記 お話を見て書いて創るサイト お話歳時記
お話歳時記創作情報デジタルコンテンツメルマガwww.pleasuremind.jp TOP
六月-海と水辺の物語。
 
  カッパの嫁ゴ。
 

  河童は、ミズチと言う名前が示す通り、水の神様と考えられています。
  水の神様と童子というのは切っても切れない関係にあり、河童との関係も、指摘されている所です。

  水の神様と童子の話は、「竜宮童子」という話型が有名です。

  ある貧しい男が、年越しの夜、売れ残りの薪を淵に投げ入れた所、
  淵の底から美しい女性が現れ、竜宮に招かれ、童子(いっぱんに醜い童子)を
  授かります。
  その童子は、黄金を出したり、願いを叶えたり富貴をもたらすのですが、
  長者になって育てるのが面倒になるとか、
  隠し育てていたのを見つかるとか、
  家から追い出すなどして、もとの貧しい生活に戻る、というお話です。

  この話型は「ヨゲナイ様」、「ウントク」、「ヒョウトク」、「はなたれ小僧様」等、多くのものがあり、どれも、お正月に水の神に贈り物をしたお返しに童子を授かるお話です。

  「カッパの嫁ゴ。」
 

  昔、昔、あるところに、おとうと娘ゴが三人すんでいました。家の前には千刈りの田んぼを作っていました。

  ある夏の事でした。その年は、カラ梅雨で、田んぼから水がさっぱり無くなってしまいました。植えたばかりの苗が、ひび割れた田んぼの中に揺れていました。

「誰か水くれねえかなぁ、そしたら娘ゴくれてやっからよぉ。」
田んぼのあぜで、おとうは思わず、そう言ってしまいました。

「ほんとだな?」
どこからか、そう声がしました。おとうはその声がどこから聞こえて来たのか?ときょろきょろ探しました。

「水をくれてやったら、ほんとに娘ゴをくれるのか?」
もう一度、声がしました。水口の所の葦の茂みから、小さな子供のようなカッパがのぞいていました。

「ああ、水をくれたら、娘ゴやるぞ。」
おとうはそう言いました。
「わがった。」
カッパはそう言うと、田んぼに指をちょんとつけました。するとひび割れた地面から、水がぶくぶくわき出し、いつの間にか、田んぼに、なみなみと水があふれていたのです。

「明日、オメェんとこに娘ゴをもらいにいくぞ。」
カッパはそう言うと、水の中にバシャンと飛び込み、消えてしまいました。

  家に帰ったおとうは困り果てました。自分の娘に、カッパの嫁に行ってくれと言わなければなりませんでした。おとうは、晩飯もノドを通らず、寝込んでしまいました。

「おとう、どうしたね? 寝てないで、ご飯たべれ。」
「ああ。」
一番めの娘が言っても、おとうは出て来ませんでした。

「おとう、どうしたね? 寝てないで、ご飯たべれ。」
「ああ。」
ニ番めの娘が言っても、おとうは出て来ませんでした。  

「おとう、どうしたね? 寝てないで、ご飯たべれ。」
「ああ。」
三番めの娘が言うと、おとうはやっと出て来ました。


「おとう、どうしたね?」
娘達が聞くと,おとうは、やっと思い口を開きました。
「実はの、田んぼに水をくれたら娘をやると、カッパと約束してしもうたのじゃ。」
それを聞いた一番めの娘は怒りだしました。
「どうしてそんな約束をしてしもうたのじゃ?私は死んでも嫌です!」
二番目の娘も怒りました。
「カッパの嫁など、恥ずかしくてなれません!」
おとうは二人に責められ、ほとほと困りました。

「・・・おとう、私が行ってもいいから、そんな困った顔せずに、ご飯たべれ。」
三番目の娘はそう言いました。

「お前、そんな事言って、どうするのか?」
「心配いらんで。それより、おとう。嫁入り道具に、ヒョウタンを百個、用意してくだせぇ。」
「ヒョウタンをか?」
「はい。」
末娘は真剣な顔で言いました。おとうは、末娘の言う通り、ヒョウタンを百個、そしてせめてもと、白無垢を用意しました。


  次の日の夜の事です。夜中に、戸をドンドン叩く音がしました。
「おらだ。おらだ。 娘ゴをもらいに来たぞ。」
末娘は、ヒョウタンを百個、腰にまくと、白無垢を着て、戸を開けました。

そこには、蓮の葉をもったカッパがたっていました。

おとうは止めようと立ち上がりましたが、末娘は振り返ると、「行って来ます。」と言って、カッパの後をついていきました。

カッパは蓮の葉を末娘の頭の上にかざし、手をひいて夜道をちょこちょこと歩いていきました。

暗い山道がうねうねと続き、大きな沼の前につきました。カッパはそのまま、末娘の手を引いて沼へと入って行きました。

「俺の家はこの水の中だ。さ、一緒にこい。」
カッパは水の中へと引き込もうと、末娘の手を引っ張りました。末娘は沼に引き込まれ、白無垢が水面に広がりました。
「ああ?」
カッパは娘を水中に引き込もうとしましたが、引き込めませんでした。

娘は体にヒョウタンを百個ぶら下げ、白無垢の下に隠していたのです。

カッパは、手を引き、足を引き、なんとか娘を引き込もうとしましたが、どうしても,水の中に引き込む事が出来ませんでした。

カッパは水の上にちょこんと頭を出すと、
「やっば、人間の嫁ゴは、だめだぁ。カッパはカッパの嫁ゴをもろた方がエェ。」
と言って、沼の中に消えて行きました。

こうして末娘は、助かり、二度とカッパがやってくる事はありませんでした。

       カッパの嫁ゴ。


   
 


  水神から贈られた童子のお話は他にも様々な形のものがあります。

  静岡県引佐郡鎮玉村のクルメキ淵のお話(引佐郡志)では、その淵から出てきた童子は竜宮童子といわれ、村の家々の田植えの手伝いをしたり、夏のにわか雨にはすぐ出てきて、干し物を片づけてくれた、とあります。

  また、長野県伊那郡郡大下条村川田のお話(岩崎清美・伊那の伝説)では、大家(おええ)という家の後ろにある一坪ほどの井戸のような池から、カワランベが出てきて、田植えの手伝いをしたり、膳椀鋤鍬等を貸してくれたり、釜の火をたいてくれた、とあります。

  愛知県北設楽郡富山村市原の田辺家では屋敷の下に青淵があり、ここから出てきた小僧は、来客の時必ず、アメノウオを二尾ずつとって来てくれ、農業の手伝いをしてくれ、平日は竃の上、または釜のフタの上に居て、食事をしたと伝えられ、その時使った御器は欠けているが今も残っているそうです。
  これは二つあって、一方の家では、竜宮から持ってきたものと伝えています。