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端午の節句と山姥。
  五月節供の笹巻き。
      笹巻きは中国では、粽(ちまき)。
  その由来は、川に身を投げた中国の楚の国の王族、屈原を慰めるためのものでした。

     →ちまきと柏餅

  さて、日本にはどんなお話があるのでしょうか?

 

「五月節供の笹巻き。」

 

  とんと昔、ある事だったのか、なかった事なのか、ある所に夫婦がすんでおったそうです。
  嫁様にややこが出来て、ズンズンお腹がふくらみ、ついに生まれる時となりましたが、嫁様はうんうん唸るばかりで、いっこうにややは出てきません。

主人は気がもめてもめて、「おらぁ、産神様、よんでくらぁ。」と、嫁様と産婆様をおいて、産神様を呼びに、夜の山へ行きました。

主人は松明もって行きましたが、途中で雨が降り始めました。
「まだ、産神様といきあわねぇが、はて、こりゃどうすべぇ?」
困った主人は村はずれの地蔵堂で雨宿りをする事にしました。
「お地蔵様、ちょっくら雨宿りさせてくだっせ。」
主人はお堂に上がり込んで休んでいましたが、つい、うとうとしてしまいました。
  
すると、外から声がしてきました。
「地蔵様、地蔵様。お産がはじまったけに、道(運命)決めにいごか。」
「ややぁ、せっかくだけども、お客人がおって、いきかねます。どうか、産神様、ええ案配してやってくだされ。」
「ほな、わすが案配してきましょ。」

しばらくして、また声が聞こえて来ました。
「地蔵様、地蔵様、何事なく、おとこんこ、生まれましたでぇ。」
「ご苦労様でしたの、産神様。して、どったら道となりましたかの?」
「あのこの道は、五つの節供に川の神様が取っていかねば、長く生きる命となったでなぁ。」
「そうですかぁ、どうすれば良かろうですかの?」
「五つの節供に、魔除けをよくよくやっておけば、取られずにすむかも知れぬ。」
「そうですかぁ、ご苦労様でしたぁ。」

主人はハッと目を覚ましました。夢だったのか、本当だったのか、よくわかりませんでした。お地蔵様を見ても、いつもの通りに座っておられます。主人は急に不安になって、家に帰ってみると、男の子が生まれておりました。

 では、あれは本当の事だったか。
 この子の命は、五つの節供に、川の神様に取られるのけ?

主人は、誰にも言わず、よう生まれた、よう生まれたと、嫁様と赤ん坊を大事に大事にしました。

 

 五つまで、男の子は元気に育ち、とうとう五月節供となりました。
主人は、魔除けとして、屋根を蓬と菖蒲で葺き、菖蒲湯を焚いて、息子を入れて、菖蒲酒をつくり息子に飲ませ、菖蒲でつくった兜を、息子の頭にのせ、笹巻きをつくって、お地蔵様と産神様にお供えし、村のものに配り、みんなで食べて、祝いました。

 これで、息子は大丈夫じゃろうか?

男の子は、何も知らずに無邪気に菖蒲の兜をかぶって遊んでいました。

「俺といっしょに遊ぶベェ。」
家の前の池の薮から、髪の毛のかぶいたワラシが、出て来て手を振りました。男の子は、その子を見ると、にっこり笑いました。
「笹巻きあるで、一緒に食べねか?」
ワラシは手をバタバタふりました。
「菖蒲くさくて、側さ、よれね。」
「じゃ、投げてやっから、一緒に食べるべ。」
男の子はワラシに笹巻きを投げてやりました。すると、その笹巻きはどうした事か、ヒュルンとワラシの目に突き刺さりました。
「エデッ、エデェ〜〜〜!」
ワラシは叫びながら、池の中へ飛び込み、それきり浮かんできませんでした。

主人はびっくりして飛んできましたが、あれが川の神様じゃったかと、笹巻きを見て、ほっと胸を撫で下ろしました。

 それから、男の子はたいそう長生きをしたという事です。

       五月節供の笹巻き。


   
 

  笹巻きを、日本独自のものとするか、粽(ちまき)とするかで、このお話の捉え方が変わるかもしれません。

  水に住む神様と厄よけ、どこか似ているように思います。


  ◆補記
  ◆笹巻き。
◇山形笹巻き。
 http://www.ekamo.com/goods/ippin/sasamaki.html
◇秋田笹巻きの作り方。
 http://www2.e-komachi.jp/chisan/aji/dentou/dentou_menu073.html
 http://www2.e-komachi.jp/chisan/aji/