縁の下の小僧様。

貧乏神は福の神ではないか?といくつかお話を並べてきましたが、やはり、どうも両方の神は一対のものらしいようです。

そして、小さな神でもあるようです。


「縁の下の小僧様。」

むかし、ある所に、大金持ちの酒屋さんがありました。

その隣に、大変な貧乏で、大変大変貧乏で、どうにもこうにもならない家があったのです。


大歳の日の事です。


その家では夫婦と子供三人、ついに食べていく事が出来なくなってしまいました。

おとぅはみんなを前に言いました。

「みんな、今日は、お椀をもって、乞食に出よう。」

そして、ふか〜く、ふかく、ため息をつきました。

おとぅとおかぁが三人の子供を連れて、お椀を持って外へでると、ごそごそと縁の下から、音がします。

のぞいてみると、見知らぬ三つ四つの小さな男の子が、ちょこちょこと出て来て、「わっちも乞食に連れてってくれ。」と、せがみました。

見た事も無い子供に、おとぅもおかぁも子供たちも驚きました。

「お前はいったい誰かの?」

おとぅが尋ねると、

「わっちはこの縁の下にいつもおった、貧乏神じゃ。」

と、明るい顔で言いました。

貧乏神と言われても、おとぅもおかぁも、

まして、こんな子供の言うことなど、信じられません。

「これからの、わしらは、町に出て、知らぬ人たちに、モノをもらいに行くのじゃ。連れてはいけぬぞ。」

おとぅがうるさそうに言うと、男の子はにこにこ笑って、

「ちょっと待っとってくれな。」

と言うと、家の裏の方へ、たたっと走って行くと、手をぎゅっと握りしめて帰ってきました。

「これで四升鍋いっぴゃあのご飯を炊いてくれ。」

男の子は、手を開いて、一握りのお米を差し出しました。

「お米だ。」

「お米だぞ。」

男の子が持って来たお米に、子供たちは騒ぎましたが、

おとぅは、う〜んと困った顔をしました。

「こんなちょびっとでは、お粥も出来ないぞ。」

しかし、男の子はわけがわからないのか、ただ、ニコニコするだけでした。

男の子をかわいそうに思ったおかぁは、お粥を作る事にしました。

男の子はおかぁのあとにつづいて、

「まんま、いぴゃあ、まんま、いっぴゃあ。」と、楽しそうにはやしていました。

すると、不思議に、きれいなご飯が、四升鍋にいっぱいに出来上がりました。

「どうした事だろうの?」

「あればかりのお米がこんなたくさんのご飯になったわ。」

男の子はにこにこ笑ってました。

そして、おかぁのこさえた握り飯を、みんなと一緒に食べました。

お腹がいっぱいになって人心地ついた頃、

隣の家からペッタン、ペッタン、お餅をつく音が聞こえてきました。

「お正月が来たのう。」

おとぅがふぅとため息をつきました。

おかぁが悲しそうな顔をしました。

お正月が来ても餅をつけるわけで無し、二人に、あてなどありませんでした。

男の子は,二人の顔をじっと見ていましたが、

「少し、待っとってくれ。」

と言って、飛び出して行きました。

三人の子供たちは、あの子は何をするのだろう?と、

あとを追いかけて行くと、男の子は塀の板をはがし、隣の家に入って行きました。

子供たちも男の子のあとを追って行きました。

隣の家では、たくさんのお餅をついている所でした。

ペッタン、ペッタン、大勢の人が、次々とお餅をついて、

まるめてお餅にしていました。

男の子は、どこからか、お皿に紅を溶かしたものをとりだして、でき上がったお餅の上に赤い紅をチョイチョイとつけて、

そのまま、隠れました。


「なんだ?この赤いものは?

血がついとるみたいで気持ちが悪い、捨ててしまえ。」

大分限者の旦那さんは使用人を叱り飛ばしました。

使用人は、もったいないと思いながらも、また叱られるのもイヤなので外へ次々に運び出そうとしました。

「捨てるんなら、俺にください。」

男の子は門の前で言いました。

そして、その餅をもらって、子供たちで持って帰り、そのお正月は、みんな機嫌よく過ごす事が出来ました。


それから、どうした事でしょうか?

隣の分限者は何をしてもうまくいかなくなり、次第に傾いていきました。

反対に、その福分がうつったように、貧乏だった夫婦の家は、裕福となっていきました。

自分を貧乏神と言った男の子は、夫婦のもとで暮らすようになり、子供たちと元気に駆け回っているそうです。


そんな貧乏神も、あるのだなぁと、話に聞いたものだそうです。


       「縁の下の小僧様。」


お話の中には「縁の下の」という部分が欠落しているのですが、もとは、縁の下なり,屋根うらなりに住んでいた、子供の神様、または小さな精霊のお話のように思います。

座敷わらしとも受け取れるのですが,座敷わらしも「小さな精霊」なのだと思います。


 
 
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