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妖怪のお話。
 
  猫と南瓜(かぼちゃ)。
    今回のお話は、殺された飼い猫が恨みを果たそうとするお話です。最初読んだ時、ぞっとしたのを覚えています。ぞぉ〜っと、してください。
  「猫と南瓜(かぼちゃ)。」
 

 昔、ある港に船宿がありました。大きな船宿で、そこに一匹の大きな黒猫がおりました。

 その猫は、おとなしい猫で、お客さんが来ても、逃げもしない、泣きもしない、どのお客さんも「こんはおとなしい猫ですなぁ。」と頭を撫でました。

 港に西から船が入ってきました。
 船子がドヤドヤと大勢やって来て、猫の頭を撫でて、宿へ入っていきました。そのあとに大きな体をした、またおとなしそうな船頭さんが入ってきました。船頭さんは黒猫を見ると、頭を撫でもせず、そのまま奥に入っていきました。

 船子は久しぶりの陸で、飲めや歌えの大騒ぎでした。
 船頭さんは宴の始めの方にだけ座り、一口二口おちょこを傾けると、そのまま庭に出て、ひとりゆった、酒を飲んでいました。そこへ棒をもった下働きのじいが、ひょいとこちらの方を見て、隠れました。船頭さんは、うん?とその方を見ていると、じいがぺこりと頭を下げました。
「どうなされた?」
「ああ、へい。宿の中に、いたちか何か入っていないかと、見回っております。」
船頭さんが聞くと、じいはそう答えました。
「何かあったかな?」
「はぁ、それが、どうもこうもわからんのです。」
じいは頭をかきかき話しはじめました。
「まかないの奥に大きな水屋があるんですが、その中に料理の魚を入れておくと、夜のうちに無くなってしまうのです。水屋の戸は大きくて、ちょっとの事では開きません。床下から何か入ってくるのじゃろうか?どこぞに穴でもあるのじゃろうか?そう思うて、夜回りをしております。」

 それは不思議な事があるものじゃ、わしも調べてみよう、と船頭さんはじいと水屋へ行って見ました。

 水屋の戸は重く、少しの事では開きません。中に入って床や壁を調べましたが、どこにも穴など見つかりません。毎晩魚を盗んでいくものとは、なんであろうか?船頭さんはじいと、まかないの影にひそんで、じっと寝たふりをしていました。

 夜中、屋敷の方から、ひょこり、ひょこりと何か黒い物が四つん這いになって歩いて来ました。船頭さんとじいが見ていると、それは、ぬっと立ち上がると、重い戸を開けて中に入って行き、しばらくして魚をくわえて出てきたのです。
 じいが突然「おまえか!」と叫びました。
 船頭さんが慌てて蝋燭に火をつけると、そこにはあの黒い猫がいたのです。黒猫はゆっくりと板間に魚を置くと、ぱっとじいに飛びかかりました。

 「じいさま!」

 船頭さんは立てかけてあったまな板を、ブンと投げました。まな板はじい様と黒猫の間にすうっと入ると、猫の額にゴツッと鈍い音を立ててぶつかり、そのまま、黒猫と一緒に板間に落ちました。船頭さんとじいは板間の上の黒猫を見ました。猫はピクリとも動きませんでした。

 翌日、船頭さんはじいと一緒に宿の裏の畑に、黒猫を埋めました。
「おとなしい猫でしたが、いつの間にああなってしまったのかのう・・・。」じいは悲しそうにつぶやきました。

  船頭さんは船子と一緒にまた西へと出港して行きました。そして、翌年の正月、再び港にやって来て、この船宿に泊まったのです。船子達はあいかわらずの飲めや歌えの大騒ぎでした。正月の事ですから、それはにぎやかな事でした。船頭さんは相変わらず、ひとりゆったり、お酒を傾けました。そこにじいが、冬には珍しい南瓜の煮付けをもって、やって来ました。
「ほぉ、これは珍しい。冬にかぼちゃかの?」
「へぇ、畑で珍しい物が出来ましたんで、こりゃあ船頭さんに差し上げねばと、 待っておりましたんで。」
じいは、嬉しそうにかしこまって、差し出しました。
「ありがたい、ではいただきますぞ。」
船頭さんは、南瓜の煮付けに箸をつけました。すると、その箸が見る間に黒く変わっていったのです。船頭さんの箸は、自分で持って歩いている銀の箸でした。銀は毒気に触れると黒く変わる性質がありました。船旅であちこちの土地に渡る船頭さんは、水を飲む時や食べる時、必ずこの箸を使って、古くなった水や食べ物をとらないように気をつけていたのです。
「・・・、じいさま、これは裏の畑でとれたとおっしゃったの?」
「へい、それがどうかしましたか?」
「これには何かの毒が入っておる。」
船頭さんはじいに黒くなった箸を見せました。
「いけねぇ!」

じいは南瓜の煮付けを船子たちにも出していたのです。二人は宴会場に走りました。一人、二人、突っ伏している者がいました。
「煮付けをくっちゃならねぇ!」
かみなりのような声がとどろきました。今まで踊り歌っていた船子達は、いっせいに親方の船頭さんを見ました。 船子達は何が何だかわかりませんでした。親方はかまわず、畳に転がっている船子を揺り起こしました。
「・・・親方、どうしたんでさぁ?」
倒れていた船子は赤ら顔で答えました。どうも、毒にやられて倒れている様子ではありませんでした。そこに女中が煮付けを運んで来ました。
「・・・あら?どうしなさったんですかえ?」
煮付けはまだ運ばれていなかったのです。

 船頭さんとじいはホッとしました。そして、鍬をもって裏の畑へと行ったのです。

 なるほど、この冬の寒い中、大きな南瓜がなっていました。畑には蔓があちこちにのび、一面に南瓜がゴロゴロ人の頭のように転がっていたのです。船頭とじいは延びた蔓の根元を掘りました。
「・・・!」
船頭とじいは息をのみました。その蔓はあの黒猫の口から、何かおどろおどろしいものを吐き出すように伸びていたのです。
「・・・大事にされながら、哀れな事よのう。」
船頭はそう言うと、鍬で黒猫の頭を割りました。

 南瓜はその夜のうちに、すべて集められ、燃やされました。なかなか燃えませんでした。それは三日三晩ブスブスと黒い煙を上げて、くすぶり続け、ついには燃え尽きたと言う事です。

       「猫と南瓜(かぼちゃ)。」

   
    日本かぼちゃは1541年(戦国時代)にポルトガル人がカンボジアから持ち込んだものとされ、 カンボジアがなまって「かぼちゃ」と呼ぶようになったそうです。 南瓜は南京瓜の略ともされ、唐茄子とも呼ばれています。南京=「なんきん」は主に関西での呼び名だそうです。
  西洋かぼちゃは1863年(江戸末期)にアメリカからやって来て、明治初期に北海道で栽培が開始され始め、それまであった日本カボチャは、食生活の変化により、栽培されなくなったそうです。

  かぼちゃの収穫は夏、貯蔵がよく効き、ビタミンAが豊富な食べ物です。また、種は皮をむいてナッツ、乾燥して虫下しの生薬となるそうです。 江戸時代には、冬至の日にかぼちゃを食べると、かぜや中風にかからないとか、福がくるなどとされました。貯蔵すると甘味が増すのだそうです。
  冬至のカボチャはおいしい、という事ですね。
  ◆補記
  ◆西瓜・南瓜・南京。
西瓜は「すいか」、南瓜は「かぼちゃ」、南京=「なんきん」はカボチャの主に関西での呼び名だそうです。
かぼちゃが読めませんでした・・・。