お話歳時記 お話を見て書いて創るサイト お話歳時記
お話歳時記創作情報デジタルコンテンツメルマガwww.pleasuremind.jp TOP
端午の節句と山姥。
  観音様ふたつ。
    観音様となっていますが山姥のお話です。登場するのは人に悪さをするタイプの山姥で、主人公の山姥退治の物語となっています。
  「観音様ふたつ。」
 

  いつの頃からか、安長という所の奥には山姥がすんでいると、噂されるようになっていました。

  安長の原では、いつも赤子の泣き声が聞こえて、人が一人、また一人と消えて行きました。辺りのものは恐れて、その近くの原に行くものはいなくなりました。

  困った事が起こりました。村のものが安長の原を怖がって、山に入る事が出来ず、薪を拾う事も、木を切り出す事も出来なくなってしまったのです。

「よし、俺が何とかしてやろう。」
安長の村一番の力持ち、八平太は、そう思い立つと背負子を背負い、薪拾いの姿となって、安長が原へ出かけて行きました。

八平太が原の中に入ると、うわさ通り、どこからか赤子の泣き声が聞こえてきました。
「ふ〜ん、俺を取り殺すつもりか。」
八平太はかまわず声のする方へ、どんどん近づいて行きました。すると声の主は赤子ではなく、お婆さんでした。
「婆さん、こんなところでどうしとる?」
「おらぁ、道に迷うて困っとるがな。」
こいつが山姥なら、俺を殺そうと、どこかで正体を見せるはずじゃ。八平太は、そう思いました。
「そんなら、この背負子に乗ったらええ。 村まで送ってってやろう。」
「そうかぁ、なら俺が降ろしてくれ、言うたら降ろしてくれろ。」
そう言って婆さんが背負子に乗ると、八平太はそのお婆さんをクルクルと帯で背負子にくくりつけ、そのまま背負ってタッタッタッと走り出しました。

「お若いの、お若いの。 そろそろ降ろしてくだされ。」
「まだまだ村は遠いから。」
八平太はタッタッタッと走りました。
「お若いの、お若いの。 腰がいとうでどうもならん。 降ろしてくだされ。」
「村までもうそろそろじゃ、辛抱しなされ。」
八平太はタッタッタッと走り続けました。
「痛い、痛い。 降ろしてくだされ。 降ろしてくだされ。」
背負われた婆はいつの間にか山姥の姿に変わっていました。帯で背負子に縛られた山姥は、木のような手足をバタバタさせて、どうにか八平太を取って喰おうと、もがきました。八平太は走って走って、暴れる山姥によろけながら、家の中に駆け込みました。

家の中に駆け込んだ八平太は、戸や格子窓を閉めて、囲炉裏の火をドウドウ焚くと、そこに山姥を投げ込みました。
「うわ〜、あちちちち!」
背負子に縛られた山姥はしばらく火の中で暴れていましたが、囲炉裏からころがり落ちました。
八平太は天秤棒を持つと、「この、山姥が! いままで人をぎょうさん喰い殺しおって! 逃すものか!」と、ありったけの力でバンバン叩きました。

これはたまらん。

あまりの強い力で殴られた山姥は矢平太の強さに恐れをなしたのか、家の中を逃げ回りました。辺りにはもうもうと灰がちって、なにも見えなくなりました。八平太も山姥がどこにいったのか、わからず、灰がおさまるのを待ちました。しばらくすると灰はおさまりましたが、家の中には山姥はどこにもいませんでした。
 
どこに逃げたのじゃろう?
どこかに隠れて俺を襲うつもりじゃろうか?

八平太が家の中を探すと、仏壇に観音様が二つ、座ってありました。

いままで一人しかおらんかった、観音様が、二つある。
こりゃあ、どちらかが山姥が化けよったに違いない。

しかし、見れば見るほど観音様はうり二つ、見分けがつきません。だからといって両方壊すわけにも、このまま二つともお祭りするわけには行きません。
  
八平太はしばらく考えた後、小豆をとぎはじめました。そして、釜で小豆飯をぐつぐつ作りはじめました。
「うちの観音様は、小豆飯を供えると、いつもにっこり笑って右の手をお出しなさる。それで、山姥が化けた方がわかるぞ。」
八平太は出来た小豆飯を供えました。

すると、思った通り、一方の観音様がにっこり笑って、手をさし出しました。
八平太は、
「ああ、この動かない観音様が、山姥だな。こいつ、怖くて動きもしねぇぞ。」
「ああ、観音様。 今悪い観音様を、燃やしてしまいますけぇ、それまで、この石櫃の中に入っていてくだせぇ。」
八平太は、山姥の化けた観音様を石櫃に入れ、本物の観音様を燃やすフリをしました。
「どうだ! この山姥め! 熱いか! 苦しいか!」
八平太は、観音様を燃やすフリをして、湯をぐつぐつ沸かしました。そして今度は石櫃の中にお湯を流し込みました。石櫃はガタガタ激しく揺れました。八平太は蓋のうえに、どっかと腰をおろして言いました。

「ああ、観音様。 お風呂はそんなに気持ちがいいですかい?あんなに沢山人を喰い殺した鬼婆を退治出来たのも観音様のおかげです。ありがてぇ〜、ありがてぇぇ。」

石櫃からは湯があふれ出しました。
そして、いつの間にか石櫃は静かになっていました。

八平太は、山姥の入った石櫃を縄でグルグル巻きにすると、安長の原の真ん中に深い穴を掘り、そこに投げ込み、埋めてしまいました。その上に、山姥が二度と出てこられないように、大きな石をドテンと置きました。

こうして、山姥は退治され、安長の村人は、ふたたび山に入れるようになりました。

         「観音様ふたつ。」

   
    ちょっと改変しています。
  原本ではラスト、矢平太は山姥を素手で殴ったり蹴ったりして退治するんですが、ちょいきついかも?と言う事で、山姥退治の定番、櫃に入れてお湯を流し込むに、変更してあります。それでも、ちょっときついかも・・・。

  余談ですが、ムカデとかヘビとかも熱湯をかければ死んでしまいます。
  庭をつついてると、鉢の下とかでムカデを見つけるんですが、スコップでたたいてもなかなか死にません。一度、洗濯機の中の洗濯物(服)の上にムカデがいて、叩くわけにも行かず、殺す方法が見つからず、そこで、熱湯をかけてみたら、あっという間に死んでしまいました。

    けっこう熱湯って便利ですよ。