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十一月の行事ー神様と縁結びのお話。
 
  山の神とほうき神。
    恋愛物?ではなく福運のお話です。
  運定めの話として分類されていて、父親、または巡礼が、村境のお堂や大木などで休んでいると、そこで神様たちの話を聞き、生まれてくる子供の寿命や運命を聞く、というお話です。
  神様は、産土の神、山の神、ほうき神、杓子の神、便所の神、奄美など沖縄ではケンムン等が、運命を定めるとされています。
  「山の神とほうき神。」
 


  昔、ある所に貧乏な夫婦がありました。
  おかみさんは臨月で、もうじき子供が生まれるからと、亭主は山に入り、薪取りにせいを出しました。もう少し、もう少しと思っているうち、日が暮れて、ある洞のそばの大きな木の下に泊まりました。

  夜半過ぎに、どこからか、馬の鈴の音と「ほいや、ほいや。」と言う掛け声が聞こえて来ました。そして、その鈴の音と掛け声だけが、大きな木の前に来ると止まりました。亭主は何が起きたのかわからず、木の陰に隠れました。
「さぁ、山の神殿、参ろうか。 時刻に遅れてはなりません。」
「やぁ、産土の神殿でござったか。 塞の神どのもご一緒でござるか。」
「一緒でござるぞ。」
「実はのう、今夜わしの所に客人があっての、行かれんのじゃ。どうかお前様だけで行ってもらえぬか?」
「さようでござるか、ではわしらだけで行って参りましょう。」
神様達はまた、鈴の音と共に行ってしまいました。
亭主は不思議な事もあるものじゃと思っていると、明け方になって、また鈴の音が帰ってきました。
「山の神殿、今戻りましたぞ。お産は一軒かと思っておりましたら、隣の家でもお産がありました。男の子の方は、ワラ一本の持ち運でしたが、女の子の方は九十九の宝が付いております。その日その日の使いは塩三升ほどでござる。塞の神殿の取り持ちで、夫婦にしようと言う事じゃが、山の神殿はどう思われる?」
「うむ、わしも賛成じゃ。」

  亭主はその話を聞くと、急いで家に帰りました。すると、家ではお産があって、男の子が生まれていました。隣の家では女の子が生まれていました。亭主は不思議な事があるものじゃと、隣の家にいって二人を夫婦にしようと決めました。

  女の子の名前は美菜、男の子の名前は晋三と名付けられました。二人は大きくなって夫婦となりました。女房の方は心が広く、お酒もたしなみ、また人にも勧め、お金を使う所は使い、また払い、商売も手広く、よく働きました。
  そのため、物がたまり、蔵も次々に増え、ちょうど九十九の蔵が建ちました。しかし主人の方はたいそうな小心者で、あと一戸の蔵を建てると百戸の蔵が立つと言うのに、ただ、心配ばかりしていました。
「あんた、気持ちよう働いて、気持ちよう稼いで、気持ちよう使えばええ。」
笑って答える女房に晋三は腹を立てました。
「女房は金遣いが荒く、無駄に酒を飲み困ったものだ。なんとか戒めたいものだ。」と、考えていました。
晋三はある時、旅の六部に出会いました。女房の事を話してみると六部は、どうすればよいか、教えてくれました。
「それなら、満月の朝、九十九戸の蔵の真ん中に土蔵の屋根を見るがよい。朝日の中に紫のひただれを着た小人が三人、舞を舞うておるのが見える。その三人の真ん中の翁の左のヒザを、うつぎの弓に蓬の矢をつがえて射るがよい。お前の思うようになろじゃろうよ。」

  満月の朝、晋三はうつぎの弓と蓬の矢をもって外に出ました。すると、九十九の真ん中の蔵の屋根に、三人の小人の翁がいました。三人の翁は、赤い扇をひらひらと、東から、西から、南から、北から、招くように、朝日の中に舞い踊っていたのです。
晋三は、真ん中の翁の左ヒザめがけて、矢を撃ちました。
ビュオン。
矢は音を立てて翁の左ヒザを射ぬきました。翁たちはあっと声をあげると、晋三を見ながら崩れるように消えてしまいました。

  それから、晋三の家はおかしくなってしまいました。 働いても働いても、これまでと違って、稼ぐどころか、どんどん貧乏になっていきました。たずねてくる人も少なくなり、使用人も一人、また一人とやめていきました。腹を立てた晋三は「みんなお前が悪いのだ!」と女房を家から追い出してしまいました。
  女房の美菜は女中を一人連れて、どこ行くあても無く歩きました。日が暮れて、あたりは真っ暗となり、もう前に進めませんでした。
「これからどこにいったらよいのでしょう?」
美菜は女中と一緒に一晩泣きました。  

  夜が明けました。美菜が顔をあげて見ると、朝日の中から、若い美しい娘が三人、こちらの方へ歩いてきました。 一人足をケガしているのか、二人が両脇をささえていました。
美菜は駆け寄り手を貸すと、
「あなた達は、どこに行きなさる?」と尋ねました。
娘の一人が答えました。
「私たちはあの山の、もう一つ向こうの、雉の里と言う所にいく所です。」
美菜には行くあてがありませんでした。
目の前に怪我ををしたものがいました。自分にも出来る事があるのが、うれしくてしかたありませんでした。
  
  美菜は、ケガをした娘を連れて、その娘達と雉の里へ行く事にしました。五人の女達は、険しい山道を登り、支え合いながら、進みました。苦しい道でしたが、不思議と楽しくありました。途方に暮れていた心が、ほんの少し、軽くなったのです。

日が暮れる頃、野原の中に、あばら屋が見えました。
「あの家です。」
娘達が言いました。
「何もありませんが、今晩一晩お泊まりになりませんか?」
娘達は美菜たちを誘いました。
「ええ、そうさせてください。」
二人は喜んで中に入りました。

中には囲炉裏に三升入りくらいのふるい釜がかかっていました。
「何もありませんが、大根でも取って来て、煮て食べましょう。」
娘の一人が、外から大根を取って来ました。 味噌をつけて食べると、たいそう良い味がしました。その日、五人は暖い小屋の中で眠りました。

  翌朝、目がさめていると、三人の娘がいません。小屋の中には、美菜と女中と、そして赤い扇が三つ、あるだけでした。二人は外に出て三人を探しました。小屋の回りは大根畑で、昨日抜いた後に、水が泉のようにコンコンと湧いていました。その水をすくって飲むと、それは立派なお酒でした。美菜と女中は不思議な事に顔を見合わせました。

  三人の娘は戻ってきませんでした。次の日も、次の日も、いつまでたっても帰ってきませんでした。美菜と女中は、釜に酒を汲んで町に売りに行く事にしました。
「酒や〜、酒や。 泉酒や〜。」
こういって触れ歩くとあっという間に酒は売り切れてしまいました。 酒はたいそう良い味で、町に持っていくと飛ぶように売れました。泉の酒は汲めども汲めどもつきませんでした。
  お酒を売って得たお金で、美菜と女中は、いろんな品物を買いました。あばら屋は、いつの間にか大きな酒屋になりました。家を建て、蔵を沢山建てました。大根畑のまわりは、いつしか、立派な町になっていたのです。

  その頃、晋三は九十九の蔵も無くなり、ひどい貧乏となって、その日の暮らしもままならなくなりました。晋三は雉の里と言う所で、酒屋の大尽(だいじん)が出来て、たいそうにぎわう町が出来たと噂を聞きました。そこで草履でも作って売りに行こうと出かけていきました。

「ごめんくだされ。草履をこうてくださらんかの?」 
草履売りの男を見た美菜は、はっとしました。どうもどこかで見かけた男だが、誰なのかさっぱり思い出せないと、あれこれ考え、思い巡らしていました。
「奥様、あの男は先の旦那様です。」
一緒に追い出された女中が、美菜にささやきました。ああ、そうであったのか、しかしなんと落ちぶれた事かとかわいそうに思いました。そこで、ワラの束に黄金を一升計って包み、
「これで草履を作って持ってきてくださいと言って渡しておくれ。」と、女中に頼みました。
晋三は女中に渡されたワラを家に持って帰りました。
しかし、その日はあまりに寒く、晋三はそのワラを囲炉裏にくべてしまったのでした。

何日かして、晋三はまた草履を持って雉の里に行きました。
美菜は晋三が着物くらい替えて来るかと思っていましたが、相変わらずのぼろぼろの着物を着ているのを見て、どうした事かと思いました。そこで、今度はおにぎりに小判を入れて、持たせて、そっと後をつけて行きました。

  晋三は握り飯をもって、夜道を歩いて行きました。途中沼にさしかかると、鴨を見つけました。晋三は石を拾って鴨めがけて投げましたが、一つも当たりませんでした。晋三は腹を立てたのか、持っていた握り飯まで、鴨に向かって投げつけました。

  何と言う事をするのだろう・・・。

  美菜は心が暗くなりました。男はみずから持っていた福をドブに捨てていくのでした。何日かして、また晋三が草履をもってやって来ました。

美菜は晋三の前に出て行きました。
「お前だったのか。」
晋三は驚きました。

「はい、あれからまた商売をしてこうなりました。」
二人はしばらく黙っていました。
「この酒屋で、下男となって暮らしていただけませんか?」
「・・・うむ、そうしよう。」
晋三は美菜の申し出を受けました。

  美菜は気持ちよく働いて、気持ちよく稼いで、気持ちよく使いました。晋三は、細かい事を始末して、物を大事にしました。美菜の福分は、物を分け与えると言う幸せ、そして晋三の福分は、物を大事に使うと言う幸せでした。
 
 二人はそれぞれの福分に見合う幸せを得て、一生穏やかに暮らしたと言う事です。

         「山の神とほうき神。」

   
    このお話では神様達に福分が定められるのですが、定められる運命は、寿命であったり、結婚相手であったり、さまざまなものがあります。

  あなたに定められている運命があるとしたら、どうしますか?