こぶとり爺さん。

有名な「こぶとり爺さん。」のお話です。

日本での最古のものは「宇治拾遺物語」第三話ですが、これは当時、鬼にコブをとられた、と言う話が世間に流布していて、それが記録されたもの、と考えられています。

「こぶとり爺さん。」

昔、ある所に顔にこぶしほどのコブがある爺が二人いました。

一人の爺が、コブがじゃまでみっともないからと、山奥のお宮へ参って、「どうか神様、おらの顔のこぶを取ってくだせぇ。」と、願をかけて、夜籠もりしました。


爺がうとうとしていると遠くの方から音が聞こえて来ました。

笛や太鼓や囃子の音が、どんどんお宮の方へ近づいて来ます。

「こんな夜中に誰じゃ?」

爺が格子から外を見ると、大男が五、六人、鳥居をくぐり抜けて階段をのぼりながら、やって来ていたのです。

これは大変じゃ、と爺はお堂の梁に登り、じっと息をひそめ隠れました。

すると、身の丈六尺、七尺あるような、角が一つの、角が二つのと、赤鬼、青鬼がぞろぞろ入って来ました。


  とれれ、と〜れれ、

  と〜ひゃら、とひゃら、

  すっとん、すととん、すっとっとん。


鬼達は笛や太鼓を打ち鳴らし、酒を飲み、ご馳走を食べ宴会をはじめました。

最初はにぎやかにしていましたが、どうも何かたりません。


  「誰か、踊りを踊らんか?」

  「俺は踊りは苦手での。」

  「誰か、踊りを踊らんか?」

  「俺も踊りが苦手での。」


興ざめしたのか鬼達は不機嫌になり暴れはじめました。 爺は梁の上で怖くてガタガタふるえました。


  「ん?人間の匂いがするぞ。」


鬼達は梁の上の爺を見つけると、引きおろし、「爺、お前何か踊ってみろ。」と言いました。

爺は怖くて怖くて、たまりませんでしたが、

  とれれ、と〜れれ、

  と〜ひゃら、とひゃら、

  すっとん、すととん、すっとっとん、と


笛や太鼓の囃子が聞こえると爺は体がうきうきして、調子にあわせて踊り出しました。

爺の踊りは面白く、

  とれれ、と〜れれ、

  と〜ひゃら、とひゃら、

  すっとん、すととん、すっとっとん、と

三度も繰り返し踊りました。


鬼達は喜んで、手をたたいてほめました。

「せっかく、面白う踊ってくれたが、お前さんの頬のこぶは目障りじゃ、そのコブを取ってやろう。」

鬼はそう言うと爺のコブを、ちょんと取ってくれました。

爺は、顔が軽くなり、嬉しくて鬼達と一晩、踊りを踊ったり酒を酌み回して遊びました。


次の日、その話を聞いた隣の爺は、お宮に籠って夜を待ちました。

すると話の通り、鬼達が五、六人、笛や太鼓を鳴らしながらやって来ました。

隣の爺は梁の上に隠れていましたが、鬼達がやって来て、笛や太鼓を打ち鳴らし、酒を飲み、ご馳走を食べ宴会をはじめると、怖くて怖くてたまりませんでした。


  「う〜ん、やはり踊り手がいないとおもしろくないのぉ。」

  「うむ、昨日の爺がまたこねぇかのぉ。」

  「うむ、またこねぇかなぁ。」

  「・・・うん?人間の匂いがするぞ。」


鬼達はそう言うと梁の上にいた隣の爺を引き下ろしました。


  「さざ踊ってくれ、爺。」


鬼達は笛や太鼓を鳴らしました。


  でででら、でらでら、

  でひゃろろろ、

  ずでん、ずででん、ずっでんでん、


隣の爺はヒザがガクガク、ちぢみあがって、声は震え、歯はガチガチ音を立て、ころぶわ、しりもちをつくわ、まったく踊りになりませんでした。

鬼達はあきれて、笛太鼓をやめてしまいました。

「お前のようなヘタな踊りは初めて見た。これをやるからもう帰れ。」

そう言って鬼達は昨日とったコブを隣の爺の顔につけると、どこかへ消えてしまいました。


爺は顔にコブが二つとなって、すごすご家に帰りました。


         「こぶとり爺さん。」


こぶとりのお話は、世界的に分布しており、日本では顔のコブ、西洋では背中のコブが一般的です。

また、コブを取ってくれる存在が、日本では鬼、天狗等、西洋では知っている限りでは、森、山の精霊となっています。

このお話、古くはコブを取る、と言うものではなく、何らかの福を得る、博打を打つ鬼→鶏の鳴き声をマネする→鬼の残した博打のお金を得る、と言うのがもともとの形だそうです。

◆補記
   ◇醒睡笑 巻一、巻六に前半と後半が別々に記録されているそうです。



           
 
宇治拾遺物語
ママお話きかせて 1
ママお話きかせて 2
 
   

 
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