はなたれ小僧さま。

売れ残った品物、芝等を神様にお供えしたり、淵や川にお供えしていると、山の神、川の神、竜宮などから福を授かる事があります。

年越しの授かり物とも言えますが、ちょいニュアンスが違うものです。


「はなたれ小僧さま。」

昔、肥後の国、真弓の里という山奥の村に信造爺さんという爺がありました。

山に入り、柴を刈り、それを関の町に持って行き、暮らしを立てていました。

薪の売れない日は、川の橋に立ち、橋の上から川の淵へ投げ込んで、「竜神様、竜神様、今日も一日ありがとうごぜえました。」と拝んで帰るのでした。


ある日の事です。

信造爺さんは一日歩き、歩き歩き、一本の柴も売れませんでした。

そこでいつものように、薪を川に投げ込んで、竜神様を拝んで帰ろうとしました。

すると、不意に信造爺さんを呼び止める声がしました。

信造爺さんが振り返ると、川の上に、手のひらに乗るような、小さな、小さな子供を抱えた、美しい若い女が立っていました。

「信造さん。 信造さん。 今日も薪をもって来てくださって、ありがとうございます。

竜神様はたいそうお喜びで、そのご褒美にこの子供をお預けになるそうです。」

「へぇ?」

信造爺さんはびっくりしました。

「この御子は”はなたれ小僧様”と言って、願い事を何でも聞いてくださいます。

そのかわり、毎日三度ずつ、海老のなますをこしらえて、お供え申し上げてください。」

そう言って、その女の人は、信造爺さんに小さな子供をお預けになりました。


信造爺さんは大喜びで、はなたれ小僧さまを抱いて家に帰り、神棚にすえました。

そしてかしわ手を打って、「はなたれ小僧様、どうぞこの爺に、米をおつかわしください。」と、お願いしました。

何を思ったか、はなたれ小僧様はハナを「ずずず〜。」っと、すすりました。

すると、米俵が三つ、ぽんと信造爺さんの前に現れたのです。

「おお、三つも授けてくださりますか!」

信造爺さんは俵を一つ持つと、それを塩や味噌に変え、小僧様のために海老を買ってきました。

信造爺さんがその海老をなますにして小僧様に供えると、小僧様はそのなますをうまそうに食べました。

信造爺さんはその様子を見ながら、味噌汁と御飯を食べたのです。


最初のうち、信造爺さんはたりないものや入り用なものを、小僧様に頼みました。

着物やら布団やら、ハナを「ずずず〜。」「ずずず〜。」すすって、何でも出してくれました。


こんな福をもろうてよいのじゃろうか?

信造爺さんも最初のうちは何とは無しに怖いものを見るようでした。


しかしはなたれ小僧さんは、頼めばドンと千両箱も出してしまったのです。

そして、ついに小僧さんは大きくて新しい家まで出してしまいました。

信造爺さんは小僧さんの力で、倉も建ち、女中さんを雇い、いつの間にか、大金持ちになっていました。

今は山に柴を刈りに行く事もなくなり、ただ、はなたれ小僧様に海老のなますをお供えする事だけが仕事となっていました。


信造爺さんはお金持ちになって、いろんな人とつきあいが広くなりました。

あっちに呼ばれたり、こっちに呼ばれたりする事が多くなりました。

しかし、はなたれ小僧様に海老のなますをお供えしなければなりません。

信造爺さんは、小僧様にお供えするのが面倒に思えてしかたありませんでした。

もう、こんなにお金持ちになったのじゃから、これ以上、何かをお願いする事もあるまい。


信造爺さんははなたれ小僧様を神棚から降ろして言いました。

「はなたれ小僧様、私にはもう何もお願いする事がありません。

 どうか竜宮へお帰りください。

 そして、竜神様にありがとうございましたとお伝えください。」

小さな小僧様は、目をぱちくり、ぱちくり、二回すると、外へと出ました。

そして、振り返って、信造爺さんの顔を見ると、ハナを「ずずず〜。」っとすすりました。

すると、家の中のものが一つ、また一つと消えて行ったのです。


「おおっ?」

信造爺さんが驚いていると、タンスやら、何やら次々と消え、家も消えてしまいました。

そして、着ていたものも、もとのつぎだらけの着物になっていたのです。

信造爺さんはいつの間にか、もとのあばら屋の中に立っていました。


これは、しまった。


信造爺さんは、はなたれ小僧様を探しに外に飛び出しましたが、ちいさな神様は、もうどこにも、見えなかったと言う事です。

       「はなたれ小僧様。」

このお話では、小さな男の子を授かるのですが、他に臼等を授かります。

どのお話も、よくばった揚げ句にすべて失う事になる、戒めのお話です。

神霊との約束はきっちり、果たしましょう(笑)。


 
 
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