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九月ー重陽の節句とお月見。
 
  たのきゅう。
    「たのきゅう。」はうわばみと対決する役者のお話です。 狐のように変身しませんが、自分の特技を生かして窮地を脱出し、福徳を得ると言うお話です。
  「たのきゅう。」
    昔々、ある所に、たのきゅうという旅の役者がいました。
  大八車に荷物を載せて、村から村へ、町から町へ、神社の祭礼、店出し興業、数人の仲間との旅から旅への稼ぎでした。

  ある時、たのきゅうのもとに、故郷に残した母親が病気だと言う知らせが届きました。 母思いのたのきゅうは役者仲間に別れを告げ、大急ぎで戻る事になりました。 走って、走って、走り続けて、ある坂の入り口の、店屋の前で日が暮れてしまいました。
お店で蕎麦を食べて、山を越えようと店を出た所、店屋のお婆さんに止められました。
「この山には大きなうわばみがおるから、夜、山に入るのはよしたほうがえぇ。」
「うわばみがおるんですか・・・。」
たのきゅうは、うわばみも恐ろしかったのですが、何より母親の病気が心配でした。 たのきゅうは、ちょっとでも早く家に帰ろうとそのまま山へ登って行きました。 夜の坂を、走って、走って、坂ですからやっぱりしんどい。 ちょうど峠にさしかかった、たのきゅうーは、ほこらの前で一息入れる事にしました。

水を飲み、ふもとのお店で買ったゆで卵を食べようとした時、目の前に白いヒゲのお爺さんが現れました。 そのお爺さんはじっとたのきゅうの持っているゆで卵を見つめました。
「・・・お爺さん、よければ食べるかの?」  
たのきゅうがゆで卵を差し出すと、お爺さんはゆで卵をぺろっと食べて、ペロリと舌なめずりをしました。
「お前は誰というもんなら?」
お爺さんは小首をかしげて、たのきゅうに聞きました。 たのきゅうは、お爺さんの様子を不審に思い、おそるおそる答えました。
「たのきゅうというもんです。」
「そうか、お前はたぬきか。上手に人間にばけとるのう。」
お爺さんは、たのきゅうをたぬきと聞き間違えたようでした。
「いや、わしはたのきゅうというもんで。」
たのきゅうは、誤解を解こうとしましたが、おじいさんは嬉しそうに頭をブンブン回して、
「そうか、そうか、たぬきどんか。 わしはうわばみじゃ。 どうじゃ?人間にうまく化けておるじゃろう?」
と言うと、あっというまに大きな蛇にかわりました。
「ぅあ・・・。」
うわばみはたのきゅうのまわりをグルグルッとまいて、
「どうじゃ、たぬきどん。にか他のものに化けてみてくれぬか?」
と言いました。
「ほっ?ほかのもの?」
「あぁ、何でもえぇ。化けてみてくれんか?」
化けろと言われても、何に化けたらいいのか、たのきゅうは困りました。 そうじゃ、かつらがある。 たのきゅうは、岩陰でかつらをかぶり、女形になりました。
「おおっ・・・それはなんじゃ?」
「女形というもんです。」
たのきゅうは化粧した目をパチパチさせました。 うわばみは女形が気に入ったらしく、たのきゅうに酒やら魚やらを出して、 酒盛りを始めました。 たのきゅうもうわばみの機嫌をそこねては大変と、唄ったり、踊ったり、芝居をしたり、そのうち、うわばみとたのきゅうは、いろいろと話しはじめました。
「お前の大嫌いなものはなんじゃ?」
うわばみがそう聞いてきたので、たのきゅうは、
「小判と言うものが大嫌いで、えへへへ。」と、頭をかきました。
するとうわばみは、
「わしはたばこのヤニと柿の渋が大嫌いで、これが体につくとしびれて動けんようになる。」
とはなしました。
「お前はたぬきじゃし、歌や踊りもおもしろかった。 今夜はこれで別れよう。」
うわばみはそう言うと山の奥へと消えていきました。
  たのきゅうはうわばみが消えると一目散で山を降りました。 そこにはちょうど一軒家があり、樵小屋になっていて、たのきゅうが樵達に、今聞いたばかりのうわばみの話を教えると、樵達は大喜びで、たばこのヤニと柿の渋を集めてうわばみ退治に出かけていきました。 たのきゅうはホッとしたのか、樵小屋で眠りこけてしまいました。
  どんどんどん、どんどんどん。 たのきゅうは戸をたたく音で目を覚ましました。
「たぬき、よくも人間に話したな。」
うわばみがやって来たのです。
「ひぃ!うわばみ!」
たのきゅうは身を縮めました。 うわばみは小屋にぐるぐると巻きつき、きしませました。
「これで俺はもうこの山に棲めなくなってしもうた。 お前は許しておけん。 これでも喰らえっ!」
「ひっ!」
うわばみは、小屋の破風からたのきゅうに小判を投げつけました。 たのきゅうは散らばった小判を見ると、あぁそうじゃった、と思いだしました。 そして、「痛い痛い、助けてくれ〜!」と小判の中をころがりました。
「わはははは!思い知ったか!」
うわばみは次から次へとたのきゅうに小判を投げつけました。 たのきゅうは、あちこちのたうち回り、「くるしぃぃ・・・。」とうめいた後、ばったり倒れて死んだフリをしました。 うわばみはそれを見て大笑いし、嬉しそうに去って行きました。
  こうして、たのきゅうは小判を沢山手に入れ、 母親のもとに帰りました。

         「たのきゅう。」
   
    女に変身して女装して、というお話は、古くはヤマトタケルの熊襲征伐があります。
  女装するお話は、印象的なので記憶に残るのですが、昔話や神話の中でも、数がありません。(男装して、というのが一つあるんじゃないかな?)
  ただ、神話の中には女装ものが必ず一つあるって所が、ミソかも知れません。
  ◆補記
  ◇熊襲の穴。
  http://www.youdocan.ne.jp/mukasi/kumasonoana.html
  http://www.ajkj.jp/ajkj/kagoshima/hayato/kanko/kumasonoana/kumasonoana.html
   
 
◆ たのきゅうの絵本 ◆