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九月ー重陽の節句とお月見。
 
  八つ化け頭巾。
    「八つ化け頭巾。」は人を化かす狐と和尚さんのお話です。
  狐が持つ変身道具は、木の葉であったり、宝珠であったり、頭巾であったりします。 いたずらをする狐と人間との争いは、狐の持つ変身道具を奪ったり、壊したりする事で解決され、それが話のおおまかなストーリーとなるのですが、この「八つ化け頭巾。」の場合は、奪った変身道具で、もう一騒動あるという、天狗と子供の話を書いた「天狗の隠れ蓑。」に近い構造になっています。
  「八つ化け頭巾。」
    山の端のお寺に和尚さんがありました。

  町とお寺の間には田んぼと畑があって、そこここに林や森がありました。 町の檀家の若者が、和尚さんにおはぎを届けに行く途中の事です。 田んぼのあぜでお婆さんが座り込んでいました。
「お婆さん、どうしたか?」
若者が聞くとお婆さんは、「田んぼに行く途中、足をくじいたのじゃ。お若いの、すまぬが背負ってくれぬか?」と言いました。 お婆さんを背負ったら、おはぎをどうしたものじゃろう?若者は、困りました。
「なに、そのお地蔵さんの後に隠しておけばいい。」若者は言われるままに、おはぎを隠し、お婆さんを背負いました。「すまぬの。」若者はお婆さんの言う通り、あっちに歩き、こっちに歩き、その内、お婆さんは何も言わなくなりました。 不思議に思って振り向くと、それはお地蔵さんでした。 驚いた若者が、急いで地蔵さんのあった所に帰ってみると、おはぎの包みは、もうありませんでした。


  それからというもの、お寺と町の間では、お侍にしかられてお餅をとられたり、子供に和尚さんが急病だと言われ、魚を持っていかれたり、町のものは何度もひどい目にあいました。
「これは狐のしわざじゃの。」
和尚さんは狐をこらしめねばならぬと、町に出かけていきました。


  夜になって、まあるい月が出る頃、和尚さんは般若湯のはいったとっくりをぶら下げて、あぜ道を帰って行きました。 すると薮の中でガサゴソ音がすると、中から美しい姉様が出てきました。
ふむ、これが狐かの。
和尚さんは感心しました。 狐の化けた姉様は、人間と見分けがつかなかったのです。
「もしもし、和尚さん。どこにいらしてたんですか?」
狐はしなをつくって笑顔を向けました。
「狐さんか、どうもあんたの化け方はうまくないねぇ。」
狐は驚いたように目をぱちくりさせました。
「どうしてわかりましたか?」
「わしもお前の仲間じゃからよ。」
和尚さんはワハハハハと笑いました。
「お前さんの化け方は、なるほど上半身はうまいが、 腰から下はまだまだじゃ、今にも尻尾が出てしまいそうじゃろ?」
狐は慌てて自分のお尻を見ました。
「わしはどうじゃ?狐のようにみえるか?」
狐は和尚さんをじっと見ると、感心したように言いました。
「いいや、お前さんはうまい。本物の和尚さんみたいだ。」
「お前さんは何でばけるんだい?」
和尚さんは狐にかまをかけて見ました。
「俺のは、頭にかぶる頭巾だが、お前のはなんだ?」
「わしのは金の包みじゃよ。」
和尚さんは金の刺繍の入った立派な風呂敷を出しました。
女に化けた狐はじっとその風呂敷を見ると、頭巾をとり出しました。
「俺のと交換しねぇか?」
和尚さんは来たぞと思いましたが、顔をしかめて首を振りました。
「・・・こりゃあ大事なものだから。」
「そう言わねぇで替えてくれろ。」
和尚さんはしばらく考え込んだフリをした後、「仕方ないなぁ。」と言って、金の風呂敷を八つ化け頭巾と交換しました。 狐は嬉しそうに金の風呂敷をかぶると走っていきました。


  和尚さんはお寺に帰ると、八つ化け頭巾をしげしげと見ました。 なんの変哲もない頭巾でした。 「どうやって、化けるんじゃろうの?」 和尚さんは、八つ化け頭巾を頭にのせて見ました。 すると、和尚さんはお婆さんに変わったのです。
「おお?」 和尚さんは懐に頭巾がある事に気がつきました。 その頭巾をもう一度頭にのせると、もとの姿に戻りました。 和尚さんはまた頭巾を頭にのせました。 すると今度はお侍に、次は子供に、変わりました。

  和尚さんがもう一度、頭巾をかぶった時の事です。
「こんばんわ〜。和尚さんおられるかの〜?」
村の若者が数人、お寺をたずねて来たのでした。
「ほ〜い、おるぞ〜。」
和尚さんが出て見ると、若者たちはぎょっとしました。
「なんじゃの?」
和尚さんは良くわかりませんでした。
「・・・あの〜、あんたは誰かの?」
「あん・・・?」
和尚さんはやっと自分が姉様に変わっている事に気がつきました。 八つ化け頭巾で、今度は女の人に変わっていたのです。
「あんた、誰ですかの?」
「いや、私はその、」
和尚さんは若者達の前でもとに戻るわけにもいかず困ってしまいました。 何とか奥に引っ込もうとしますが、若者達は疑って、あれやこれや聞いて、話してくれません。
「あんた、どこかおかしいぞ。」
「言葉遣いも変じゃし、和尚さんもおらん。」
「あんた、何を隠しとるのじゃ?」
和尚さんはぎょっとしました。 若者たちは今にも飛びかかってきそうでした。
「あんた、もしかして狐か?」
一人が叫びました。
和尚さんは慌てて外に飛び出しました。 若者たちは追いかけてきました。 和尚さんは懐から八つ化け頭巾を出しましたが、若者たちに捕まってしまいました。
「ありゃ?」
「和尚さん?」
和尚さんはやっともとに戻りました。

  さて、その頃きつねはと言うと、和尚さんと取りかえた金の風呂敷をかぶって町へ行き、町の人に、あっちへ追われ、こっちへ追われ、棒で殴られ、石を投げられ、山へ逃げ帰ったそうです。

  だますのも、だまされるのも、良くない事のようです。

         「八つ化け頭巾。」


   
    「八つ化け頭巾。」の八つは、もとは八つのものに化けられる、いろんなものに化けられる、という意味だったと思われます。 このお話では沢山化けませんが、七つに化けられる変化玉等のお話もあります。

  狐の話は昔話の中でもかなり数が多く、五十はあるようです。 半数はやはり化かす、化かされるというお話のようです。 たぬきも同じく化かすわけですが、狐の方がすこし利口なのでしょうか?  対決色が濃くなっているようです。