お話歳時記 お話を見て書いて創るサイト お話歳時記
お話歳時記創作情報デジタルコンテンツメルマガwww.pleasuremind.jp TOP
妖怪のお話。
 
  天狗と民間伝承。
    民間伝承の天狗は、やはり山神山霊と考えられていたようです。
  天狗は村里から別世界の山中に住む異人として考えられていて、その呼び名も、山の神、大人(おおひと)、山人、グヒン等と呼ばれ、性格は強い力と激しい感情を持ち、出産時の血など不浄を非常に嫌い、空中を自在に飛行するとされていました。
  天狗は山中でさまざまな怪異を起こすとされています。
「天狗倒し」は山中で木を切り倒す音が聞こえるが行って見ると何事も無いという現象。「天狗笑い」は山中で大勢の人の声や高笑いをする声が聞こえる現象。「天狗つぶて」は大小の石がどこからともなくバラバラと飛んでくる現象。「天狗ゆすり」は夜、山小屋などがゆさゆさとゆれる現象。「天狗火」「天狗の太鼓」など怪音、怪火現象は山の神の神意とされ、このような現象が現れた時は山小屋の向きを変えたり、山の神をまつって、仕事を休んだりしました。
  また天狗は里でも怪異を起こし、「天狗隠し」と言って子供などを神隠しにあわせました。天狗隠しは旧暦四月頃に多く、あとに履物がそろえてある事から、それとわかるそうです。天狗隠しがあると、村中で鉦太鼓を打って探しましたが、木や屋根の上、何度も探した同じ場所で見つかる事が多かったそうです。そして各地に天狗松の伝説が残っています。
  一般的にその山、村境などで一番大きな木がそう呼ばれ、天狗が腰かけて休んだとか、天狗のすんでいる所とされ、切り倒してはいけない、切り倒そうとした者には怪異が起こるとされています。
  天狗には一定の通り道や聖域があるとされ、それはこの世と異界の境であり、その境界を越えたり、侵犯したりすると怪異をもって知らせたのです。

  「天狗のうちわ。」 
 

  ある所に小さな村がありました。村境に大きな丘があり、そこには一本の大きな松の木がそびえ立っていました。その松の木には天狗がすんでいるといわれ、村の人は怖がって誰も近寄りませんでした。
  この村には正吉という利口な子供がいました。正吉は天狗様のうちわが宝物だと聞いて、何とか手に入れられないか?と考えました。正吉は、かまどやお風呂で火を起こす時使う火吹き竹を取ると、大きな松の木の下に行って、のぞき込み、大きな声で、「ああっ、京の都が見える。 すげぇなぁ、すげぇなぁ。」と、おもしろそうな声を上げました。
  すると、松の木の上の方がザワザワ音をあげると、ヒュオウと音をたて風が巻き上げ、天狗が降りてきました。
  その天狗は白く長い髪で赤い顔、鼻が高く、一本足の高下駄を履き、手には行司のようなおおきな赤い団扇を持っていました。
「小僧、何をしておる?」
「これで、京の町を見てるんだよ。 ああ、すげぇなぁ。」
正吉は火吹き竹をのぞき込んで、さも遠くが見えるように言いました。
「それはなんだ?」
天狗は不思議そうに竹の筒を見ました。
「これは遠眼鏡と言って、とお〜〜〜くのものが見えるんだ。」
正吉は面白そうにあっちを向き、こっちを向き、竹筒をのぞき込みました。
「小僧、わしにもそれをのぞかせてくれまいか?」
天狗は興味ぶかげに正吉の竹筒を見ました。
「これはとっても大事なものだから、そのまま渡すわけにはいかないよ。」と、正吉はイヤそうに言いました。
「なら、しばらくこの団扇と交換しないか?」
天狗は赤い団扇をさし出しました。
「しかたがないなぁ。」
正吉は竹筒をさし出し、団扇と交換しました。
天狗は竹筒をのぞき込みました。
「うん? 京はどこじゃ?」
「それは遠くを見るのにコツがいるんだよ。 じーっと見てみなよ。」
「じーっと見るんだな。」
正吉は竹筒をじーっとのぞき込む天狗をおいて、村へと逃げ帰りました。
正吉は縁側にすわると天狗の団扇をじろじろ見ました。どうやって使うのかわからなかったのです。
正吉はパタパタ団扇を仰ぎながら「天狗さんみたいに鼻になったらおもしろいかな〜。」と言いました。
すると正吉の鼻はぐんぐん大きくなりました。
「んん?」
正吉は「鼻がもとのようにならないかなぁ。」とパタパタ団扇をあおぎました。
すると正吉の鼻はもとのように戻ったのです。
正吉は面白がって、「鼻高くなれ。」と言ってはあおぎ、「鼻低くなれ。」と言ってはあおいで、鼻を高くしたり低くして遊んでいたのですがふと、ある事をある思いつきました。


  夜になると正吉は外に出て長者様の家に忍び込みました。
そして寝ている一人娘の側にそっと近づくと「鼻高くなれ、鼻高くなれ。」と、 団扇であおいで鼻を高くしてしまいました。次の朝、娘は自分の鼻が天狗のような高い鼻になっているのに気がついて、泣き叫びました。父親も母親もどうしていいかわかりませんでした。お昼を前に正吉は堀の外で大きな声を出しました。
「鼻なおし〜、鼻なおし〜、高い鼻〜、低い鼻〜、鼻なおし〜〜〜。」
長者様はその声を聞くと外に飛び出て正吉を屋敷の中に引き入れ、「頼む、うちの娘の鼻をなおしてくれ!」と娘の部屋に連れていきました。
娘は高くなった鼻を見られないように布団をかぶっていました。天狗の団扇を出し、正吉はそっと布団を持ち上げると、「鼻小さくなれ、鼻小さくなれ。」と団扇で鼻をあおぎました。
すると娘の鼻は見る見るもと通りになり、泣いていた娘はこおどりして喜びました。
  長者様は大喜びで、正吉に沢山のお金を与えました。


  正吉は大喜びでした。
  天狗の団扇は手に入ったし、沢山のお金はあるし、有頂天になっていました。野原に寝っころがり、団扇とお金を見てはうふうふ笑いました。そして団扇で自分の鼻を高くしたり低くしたりして遊んでいました。正吉はふと自分の鼻がどこまで高くなるか、試してみたくなりました。
「鼻高くなれ、鼻高くなれ〜。」
正吉がパタパタ団扇をあおぐたびに鼻がどんどん高くなりました。鼻はそこまでも高くなりついに雲の上に突き抜けました。

  ちょうどそこには雷様が昼寝していました。正吉の鼻は雷様の横腹をどんと突いてしまいました。
「なんだ?この棒は?」
雷様は正吉の鼻をつかむとぐいっと引っ張りました。
「イテッ!」
正吉はびっくりしました。雲の上で何かが鼻をつかんで引っ張ったり、叩いたりしているのです。正吉はあわてて「鼻低くなれ!鼻低くなれ!」と団扇であおぎました。しかし鼻が突然下の方へ逃げて行くので、雷様は「なんじゃ? 逃がさんぞ、このへんな棒め!」と、両手で握り、ぐいっと引っ張りました。
「うわっ!」
正吉の体は宙に浮き団扇をあおげばあおぐほど空にどんどん昇って行きました。正吉の鼻に体全体の重さがかかりました。
「イタタタタタタッ!」
「ん?」
雷様は雲の下をのぞきました。雲の下には団扇を持った子供がバタバタ暴れていました。
「なんじゃ、これは子供の鼻じゃったのか。」
そう言うと握っていた鼻をパッと離してしまいました。
「うわあぁ〜〜〜〜〜〜〜!」
正吉はずどんと地面に落ちてしまいました。


  正吉はその後しばらく動けませんでした。
「天狗様にお祈りすれば治るんじゃないかの?」
正吉は村の人の言う通り、団扇を返し、お供え物をして謝りました。
その願いが届いたのか、正吉はやっと元気になりました。

  あんまり、いたずらするものじゃありません。

           「天狗のうちわ。」


   
    山村の天狗の祭りと天狗舞いは、奥三河の花祭りが代表的なものとされています。
  奥三河の花祭りは山頂の高嶺祭で山神天狗をまつり、その天狗天白を祭場・舞所の屋根棟に迎えて、その下で徹宵の舞が行われるそうです。これは寺社などで行われた「延年」という舞楽等が山村部に残ったものとされています。
  天狗を主題にした能楽には「鞍馬天狗」「葛城天狗」「松山天狗」「是害(せがい)」「第六天」「大会」「車僧」等の曲があります。その中には著名な山の天狗、「彦山の肥前坊」「白峰の相模坊」「大山の伯耆坊」「鞍馬の大僧正」「愛宕山の太郎坊」等がえがかれ、今も庶民信仰の対象となり、本社、本寺に並んで信者の多い所もあるそうです。
 
  ◆補記
 
◆奥三河の花祭り
http://www3.ocn.ne.jp/~kintakun/
http://senshohamada.hp.infoseek.co.jp/book-hanamaturi.htm
◆白山祭り
http://www3.ocn.ne.jp/~hkty/h/aruku-a5.html

◆延年
延年(えんねん)は、寺院等で大法会の後に僧侶や稚児によって演じられた日本の芸能。 単独の芸能ではなく、舞楽や散楽、猿楽、白拍子、小歌などを言うそうです。 平安時代中頃より行われましたが正確な起源は不明で能の原型である猿楽との関連が深いそうです。


宮城県金成町の延年 小迫祭り(おばさままつり)小迫の延年(おばさまのえんねん)
http://www.kannari.miyagi-fsci.or.jp/kanko/obasama/obasama.html

毛越寺の延年(もうつうじ) 岩手県平泉町
http://www.bunka.pref.iwate.jp/dentou/kyodo/shousai/geinou_003.html
http://www.asahi-net.or.jp/~TQ7K-WTNB/mouthuji.htm
http://www.motsuji.or.jp/HOURAKU.html

秋田県 鳥海山 金峰神社 延年チョウクライロ舞

http://www.pref.akita.jp/fpd/bunka/ukura.htm

山形県東置賜郡高畠町 安久津八幡神社
http://senshohamada.hp.infoseek.co.jp/akutu-top.htm

日光山 輪王寺 (栃木県日光市)
http://www.rinnoji.or.jp/gyouji/ennen/ennen.html

糸井川根知山寺 延年 「おててこ舞」8月31日「宵祭」、 9月1日「本祭」。

http://senshohamada.hp.infoseek.co.jp/neti-ennnen-top.htm
http://nunagawa.ne.jp/risou/kageki/casts/026.html