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十月ー亥の子突きと動物のお話。


 十月ー亥の子突きと動物のお話。 おくんち。 亥の子祭り。 亥の子突き。 
十日夜(とおかんや)と案山子上げ。 お十夜。
 狼の眉毛。 聞耳頭巾。 雀、雀。
 ネズミの浄土へころころりん。 猫とネズミの草紙。
 山の神の靱(うつぼ)。 猿正宗。
 しっぺい太郎の猿神退治。 日本の猿神伝説。 中国の猿神伝説。

 
  雀、雀。
    「舌切り雀。」は日本五大昔話の一つに数えられています。 原話を「宇治拾遺物語」の「腰折れ雀。」としているものもありますが、物語としては別物と考えられています。
  「舌切り雀。」は、舌を切るというエピソードと、雀のお宿、宝のつづらと化け物のつづらのイメージが強く、お爺さんへの報恩譚と言うイメージがありますが、実際の物語は、お爺さんが雀のお宿を尋ねていく、という、異境訪問譚とされています。
  「舌切り雀。」 
    昔がありました。
  お爺さんとお婆さんがありました。お爺さんは山へ行き、木の枝に弁当を掛け柴を刈りはじめました。しばらくしてお爺さんが弁当を食べようとすると、弁当が地面に落ちています。不思議に思ったお爺さんがフタを開けてみると、中には一匹の雀が眠っていました。
「この雀が食べてしもうたか。 良い、良い。」
お爺さんはこの雀を連れて帰ると、「おちょん」と名前をつけて大事に育てました。

晴れたある日、お爺さんが芝刈りに行った留守に、お婆さんは洗濯しようと糊を煮ました。
「おちょん、川に水を汲みにいくから、この糊を隣の猫に食べられないよう、番をしておいておくれ。」
お婆さんはおちょんに糊の番を頼んで川へ水を汲みに行きました。しばらくしてお婆さんが戻ってみると糊が無くなっていました。
「おちょん、のりはどうした?」
お婆さんが隣の猫の口を見ると、何もついていませんでしたが、おちょんのくちばしには糊がくっついていました。お婆さんは腹がたって、腹がたって、おちょんを捕まえると、ハサミでくちばしをつつき、舌を切ってしまいました。おちょんは驚き、空の向こうへバタバタと飛んで行ってしまいました。

お爺さんが帰ってくると、おちょんがいません。お婆さんに聞くと、「糊を食われたんで、腹が立って舌を切ったら逃げてしもうた。」と言います。お爺さんはおちょんがかわいそうで、探しに行きました。
  おちょん雀はどこ行った
  舌切り雀はどこ行った
  あ〜れ、かわいや、どこいった

お爺さんはおちょんを探しながら歩いて行くと、 牛洗い様がいました。
「牛洗い様、牛洗い様。ここを舌切り雀がとおらなかったですかいの?」
「通った、通った。」
「教えてくだされ、牛洗い様。」
「よしよし、牛を洗ろうた汁を大きな器に十三杯、小さな器に十三杯、 飲んでみせれば教えてやろう。」
お爺さんは牛洗い様の言う通り、ごくごく牛を洗った汁を飲みました。
「爺さ、良く飲んだ。 この川を上って行けば馬洗い様がおる。たずねてみなされ。」
 お爺さんはおちょんを探して川を上って行きました。

  舌切り雀はどこ行った
  おちょん雀はどこ行った
  あ〜れ、かわいや、かわいやな
お爺さんはおちょんを探しながら歩いて行くと、馬洗い様がいました。
「馬洗い様、馬洗い様。ここを舌切り雀がとおらなかったですかいの?」
「通った、通った。」
「教えてくだされ、馬洗い様。」
「よしよし、馬を洗ろうた汁を大きな器に十三杯、小さな器に十三杯、 飲んでみせれば教えてやろう。」
お爺さんは馬洗い様の言う通り、ごくごく馬を洗った汁を飲みました。
「爺さ、良く飲んだ。 この川を上って行けば菜洗い様がおる。たずねてみなされ。」
お爺さんはおちょんを探して川を上って行きました。

  おちょん雀はどこ行った
  舌切り雀はどこ行った
  あ〜れ、かわいや、どこいった
お爺さんはおちょんを探しながら歩いて行くと、 菜洗い様がいました。
「菜洗い様、菜洗い様。ここを舌切り雀がとおらなかったですかいの?」
「通った、通った。」
「教えてくだされ、菜洗い様。」
「よしよし、菜を洗ろうた汁を大きな器に十三杯、小さな器に十三杯、飲んでみせれば教えてやろう。」
お爺さんは菜洗い様の言う通り、ごくごく菜を洗った汁を飲みました。
「爺さ、良く飲んだ。この川を上って行けば大きな竹薮がある。かわいい雀は藍の着物、赤い前掛け、赤いたすきで稲を刈っておる。」
お爺さんはおちょんを探して竹薮の中に入って行きました。

竹薮の中には、大きな蔵が七つある立派なお屋敷がありました。お爺さんが戸口に立つと、チチチチと雀の声がしました。
「お爺さん、お爺さん、よく尋ねて来てくださいました。どうぞ、お入りください。」
お爺さんがお屋敷に入ると、おちょんが着物を着て待っていました。まわりには藍の着物に赤い前掛け、赤いたすきの雀たちが座っていました。おちょんはお爺さんを屋敷に招き入れると、ご馳走をしてもてなしました。お爺さんが安心して帰ろうとすると、おちょんが呼び止めました。
「お爺さん、お世話になったお礼です。おおきなつづらが良いですか?ちいさなつづらが良いですか?」
「わしはもう年じゃから、小さいのをおくれ。」
「はい、お爺さん。小さなつづらですね。これは必ず家に帰って開けてくださいね。」
お爺さんは小さなつづらを背負って帰り、言われた通り家に帰ってつづらを開けました。つづらの中には大判小判が沢山入っていました。お爺さんもお婆さんも大喜びしました。

お婆さんはお爺さんの話を聞くと、自分もつづらをもらってこようと竹薮の中のお屋敷に行きました。
  おちょん雀はどこ行った
  舌切り雀はどこ行った
  あ〜れ、かわいや、どこいった
お婆さんが歌うとお屋敷の中からチチチチと雀の声がしました。
「お婆さん、お婆さん、よく尋ねて来てくださいました。どうぞ、お入りください。」
 お婆さんが入ると雀達は、雪隠(かわや)の板をお膳にして、何でつくってあるのかわからないご馳走を出しました。お婆さんはご馳走をたらふく食べると、さっそく帰ると言いました。
「お爺さん、お世話になったお礼です。おおきなつづらが良いですか?ちいさなつづらが良いですか?」
「わしは元気じゃから大きいのをおくれ。」
「はい、お婆さん。大きなつづらですね。これは必ず家に帰って開けてくださいね。」
お婆さんは大喜びでつづらを背負い門の外に飛び出しました。お婆さんはつづらの中にどんな宝物が入っているか気になって、竹薮の中でつづらを降ろすと蓋を開けてしまいました。お婆さんは「ヒッ!」と声を上げ腰を抜かしてしまいました。つづらの中からは、蛇やマムシやムカデや毒虫がゾロゾロ這い出し、お婆さんに噛みつき、毒針を刺して、殺してしまいました。

  お爺さんは、お婆さんが帰ってこないのでいつまでも待っていました。
  そして雀が沢山飛んできて、お爺さんと仲良く暮らしました。
    昔、昔、あった事だそうです。

          「舌切り雀。」
   
    「腰折れ雀。」は、情け深いお婆さんが、腰の折れた雀を救い、看病して治してやります。ある日、その雀は飛び去りますが、翌日お婆さんのもとに、ふくべ(ひょうたん)の種を運んで来ました。そのふくべは大きく育ち、沢山の大きなふくべを実らせました。そのふくべから、白米がぽろぽろこぼれて来ました。ふくべの中にはお米がぎっしり入っていて、採っても採っても無くなりませんでした。
  その話を聞いた隣のお婆さんは、庭にいた雀を捕まえ、腰をひねって折ってしまいました。お婆さんはその雀を介抱するかわりに、エサもやらずに狭いカゴに閉じこめました。雀はバタバタあばれ、その様子を見たお婆さんは、「ふくべの種を持っておいで。」と外にほうりました。
  翌日、雀はふくべの種を運んできました。お婆さんは喜んでその種を畑に蒔いて育てるのですが、ひょうたんが実っても、いっこうに米がなった様子がありません。怒ったお婆さんはひょうたんを引きちぎり叩き潰すのですが、中から蛇やムカデや蜂が出てきて、お婆さんを咬んだりさしたり、ついには殺してしまいました。
  と言うようなお話です。
  どちらにも共通するものとして、雀がお米(穀物)の管理をする生き物、という位置づけを持っている事です。「雀」の登場するほとんどのお話には、穀物との関係が見られるそうです。

  「舌切り雀。」は舌を切る所が残酷と言う事で、最近はあまり子供に見せないそうです(カチカチ山も同様)。その点では「腰折れ雀。」も同じかもしれません。
  ◆補記
  牛洗い様・馬洗い様・菜洗い様。
 何をさしているのかわかりませんでしたが、赤羽末吉さんの絵本では、普通に人のように描かれていました。
腰折れ雀 
 宇治拾遺物語 四十八 雀報恩事(すずめほうおんのこと) 巻三ノ十六