ルンペルシュティルツヘン

「ルンペルシュティルツヘン。KHM55」は、「大工と鬼六。」「トム・ティット・トット。」と同型の話で、グリム童話の中の一つです。

一般的にイギリスのお話はユーモアがあり、ドイツのお話は幻想的とされていますが、比較してみるとその特徴が良くわかると思います。


ルンペルシュティルツヘン

ある川の側に水車小屋があり、レリーチェと言う娘と粉ひきが住んでいました。

貧しい生活でしたが娘は父思いで美しく、父は事あるごとに娘の自慢をしていました。

レリーチェは父が自分の自慢をするのが恥ずかしくてたまりませんでした。

それでも、自分の事を楽しそうに話す父の顔を見ると、何も言えませんでした。


ある日、粉ひきの父は森に木を切りに出かけました。

そこで、馬に乗った若者に出会ったのです。父親は、木を切りながらその若者に娘の自慢話をしました。


娘がこんな事を言った。

こんな事をしてくれた。

料理がうまい。

縫い物が上手。

いつも良く笑い、楽しい話をする。


若者は興味深そうに父親の話を聞いていました。

父親はそれがうれしくて、ついありもしない話までしてしまいました。

 「それにな、若い方、ナイショなんですよ。

  誰にも言っちゃあいけませんよ。

  うちの娘はワラをつむいで黄金に換える事ができるんでさぁ。」

若者は目を丸くして驚きました。

 「そんな娘さんなら、ぜひもらいたいものだ。」

 「あはははは、ダメですよ、若い方。

  あの子につり合うのはこの国では王様以外いませんからねぇ。」

粉ひきはそう言って、若者の申し出をやんわりことわりました。


次の日、水車小屋の家の前に立派な馬車がやって来ました。

王様がレリーチェに迎えによこしたのです。

昨日話した事が王様に伝わったのかも知れない。

粉ひきの父親は後悔しました。

しかし、レリーチェは何もわからないまま馬車に乗せられ、王様の前に召し出されました。


レリーチェの前には王様が座っていました。若い王様でした。

  料理がうまい事。

  縫い物が上手な事。

  いつも良く笑い、楽しい話をする事。

王様はレリーチェの事を何でもよく知っていました。

そして王様はレリーチェの側によるとそっと耳打ちしました。

 「それに、私はお前の秘密も知っているのだよ。」

  レリーチェには何の事だかわかりませんでした。

王様は困惑するレリーチェをワラを積んである小屋に連れて生きました。

 「昨日、お前の父に、お前がワラをつむいで金を作ると聞いたのだ。

  ここにワラと糸車を用意した。明日までに黄金をつむいで見せておくれ。」

王様はそう言うと小屋から出て行きました。


レリーチェは困ってしまいました。

たぶんお父さんが調子に乗って、王様に嘘をついてしまったんだわ。

でも、出来なければお父さんが殺されてしまうかも知れない。

レリーチェは逃げ出す事も出来ず、ワラを持ったまま座り込んでしまいました。

ワラをどうやって金に紡げばいいのでしょう?

夜は次第にふけていきました。

するとワラを押しのけて、カサコソと音をたてながら、手のひらほどの小さな男が現れました。

小人はレリーチェを見上げると

 「お前、何を困ってるんだ?」と、聞きました。

 「ワラをつむいで黄金にしなければいけないのよ。

  でもそんな事出来ないわ。」

レリーチェは、不思議そうな顔をしながら、ぽつりと言いました。

 「おいらは出来るよ。」

レリーチェは小人の言葉にびっくりしました。

 「もし、お前のかわりに黄金をつむいでやったら、何をくれる?」

小人はレリーチェを見上げて言いました。

レリーチェは首に手を当てました。十五になった時、お父さんから贈られた首飾りでした。

 「・・・この首飾りでどうかしら?」

小人は首飾りを受け取ると糸車の前に座ると、ワラを掴み糸車をブンブン回しました。

するといつの間にかワラは金の糸となり、糸巻きいっぱいに巻かれていました。

小人はわき目も振らず糸車を回し続けました。

そして次から次へと金の糸をつむぎ、夜が明ける前までにワラをすべて金の糸に換えると、消えてしまったのです。


夜が明けると王様がやってきました。そして小屋一杯の金の糸を見ると大喜びしました。

 「本当にワラを金の糸に換えるとは信じられなかったのだ。

  お前はやはりお父さんの言う通りの良いお嬢さんだ。」

王様はレリーチェと朝食を取り、一日中いろんな話をしました。

王様はレリーチェを妻に迎えようと考えていたのです。

不思議な話を確かめたかったのもありましたが、何よりレリーチェの笑顔とやさしさにひかれていたのです。


しかしレリーチェがワラを金の糸に換えた事はお城中の噂となりました。

そして、そんな事は信じられないと言うものが大勢出てきました。

王様はだまされている、家来が大勢やって来て言いました。

王様はその話を聞くと、みんなを連れて、昨日より大きな小屋に行きました。

そして、レリーチェにもう一度金の糸を紡ぐように言いました。

レリーチェはまた困ってしまいました。

自分が糸をつむいだのではありませんでした。

でも、もう嘘だとは言えませんでした。

レリーチェは小人を呼びました。するとワラの中からカサコソと小人が現れたのです。

 「また困ってるのかい?」

レリーチェはうなづきました。

 「また、ワラで金の糸をつむいでほしいの。」

 「今度は何をくれる?」

小人はレリーチェに聞きました。

レリーチェは指輪を渡しました。

お母さんの形見の指輪でした。

小人は指輪を受け取ると、糸車に座るとブンブン回しました。

そしてワラを次から次へと金の糸につむいでいきました。

そして夜が明ける前に、小屋一杯のワラを小屋一杯の金の糸に換えてしまいました。


夜が明けると王様と家来がやって来て小屋一杯の金の糸を見ました。

家来達は信じられない様子でしたが、王様の言う事が本当だと納得しました。

王様はレリーチェを小屋から連れ出すと一日中一緒にいました。

もうこれで誰も文句を言う者はいないと思ったのです。

しかしレリーチェがワラで金の糸につむぐ事は国中の知る所となりました。

そして、いろんな人がその話を疑い、お城にやって来たのです。

大変な事になってしまいました。


王様はレリーチェをもっと大きな小屋へ連れていき、みんなの前でレリーチェを小屋に入れました。

 「これで最後だよ。 みんなを信じさせてくれ。」

王様はそう言うとレリーチェを残して小屋の戸を閉めました。

小屋の中にはワラがうず高く積まれていました。

その中からカサコソとまたあの小人が出てきたのです。

 「また、金の糸をつむげと言われたのかい?」

レリーチェがうなづくと、小人は続けました。

 「じゃあ、今度はなにをくれる?」

レリーチェは戸惑いました。もう何も持っていなかったのです。

 「もう、何もあげるものがないのよ。」

 「なら、お前が王様と結婚して子供を生んだら、最初の子をくれ。」

小人の言葉にレリーチェは驚きました。

でも、まだ子供が産まれるかどうか、王様と結婚するかどうかさえわかりませんでした。

レリーチェは、ついうなずいてしまいました。

すると小人は大喜びで金の糸をつむぎ出しました。

小人は糸車をブンブン回し、朝までにはすべてのワラを金の糸につむいでしまいました。


朝になり、王様がやって来ました。

そして小屋の中に積まれた金の糸を、国の人々に見せました。

もう誰もレリーチェを疑うものはいませんでした。


王様はレリーチェを妻に迎え盛大な結婚式を挙げました。

王様との生活は忙しく、またいろんな事を覚えていかなければなりませんでした。

そんな中でレリーチェは小人との約束を忘れていました。

それから一年、王妃となったレリーチェは男の子を生みました。<

王様は大変喜びました。


その夜の事です。

カサコソという音でレリーチェは目を覚ましました。

レリーチェはゆりかごの上に何か小さな動くものを見つけました。

あの小人でした。

 「約束した通り、子供をもらいに来たよ。」

レリーチェは驚きました。

 「待って!この国にある宝物なら何でもあげる。その子は連れていかないで!」

 「だめだよ、俺は人間の子が大好きなんだ。」

レリーチェは小人に頼み続けました。

小人も困ってしまい、一つだけ条件を出しました。

 「三日だけ待ってやろう。

  その間に俺の名前を当ててみな。出来なければお前の子供をもらっていくぞ。」

そう言うとまたカサコソと音をたてながらどこかへ消えていきました。


レリーチェは赤ん坊を抱きかかえるとすぐに王様の所へ行きました。

そして、今までの事を話したのです。

王様は驚きましたが、すぐに家臣を集めました。

そして夜通しかかって、思い出せる限りの名前を書き出させ、国中のものに、変わった名前や特別な名前を聞いて回るよう命令しました。

そして、王様は自ら名前を探しに馬を駆って飛び出しました。


一日目の夜となりました。

小人がカサコソとやって来ました。

レリーチェは、家臣が思いつく限り書いた名前を一晩中言いました。それでも小人は首をふりました。


 「いいや、どれもこれも俺の名前じゃない。」

そう言うと、小人はまたカサコソと音をたてながら消えていきました。


夜が明けると国中へ変わった名前や特別な名前を探しに行った家来が帰ってきました。

そしていろんな名前を書き出し王妃のに差し出しました。


二日目の夜になりました。小人がカサコソとやって来ました。

レリーチェは、家臣が国中から探してきた名前を一晩中言いました。

それでも小人は首をふりました。

 「いいや、どれもこれも俺の名前じゃない。」

そう言うと、小人はまたカサコソと音をたてながら消えていきました。


最後の日になりました。

王様はまだ帰って来ていませんでした。

レリーチェは赤ん坊を抱いてじっと待ちました。

日が沈みすこしづつ暗くなって行きました。


太陽の沈むほんの少し前です。

王様が馬に乗ってお城に帰ってきました。

レリーチェは王様のもとへ走りました。

 「すまない、なかなか新しい名前が見つからなかったんだ。」

 「それで、見つかったのですか?」

レリーチェが聞くと王様が笑っていいました。

 「北の山のきこりが変わった話を教えてくれたんだ。

  そのきこりは、山の岩場に小さな家を見つけたんだそうだ。

  きこりがそっと家の中をのぞくと、家の中のたき火のまわりを

  小人が一本足でぴょんぴょん飛び跳ねながら唄をうたっていたそうだ。」

    「今日はパン焼き 明日はワイン仕込み

     あさって、きさきの小僧をもらう。

     俺の名前はだあれもしらぬ、

     がたがたの竹馬小僧、

     ルンペルシュティルツヘン。」

レリーチェの顔がパァッと明るくなりました。

レリーチェは赤ん坊を抱いて部屋へ向かいました。

部屋には小人が待っていました。


 「さぁ、俺の名前がわかるかな?」


小人は勝ち誇ったように言いました。

レリーチェは静かに言いました。

 「がたがたの竹馬小僧、

  ルンペルシュティルツヘン。」

小人は顔を真っ赤にして、

 「悪魔の野郎が教えやがったな!」と叫ぶと段々足踏みをして、床を割り、自分の足をめり込ませてしまいました。

小人は「キィー!」と金切り声をあげ、自分の足をガシッと掴むと、思いっきり引っ張りました。

すると小人の体は半分に引き裂け、そのまま煙となって消えてしまいました。


影でみていた王様が剣を鞘に収めながら部屋へと入ってきました。

それから、レリーチェは王様と子供と何事も無く暮らしました。


        「ルンペルシュティルツヘン。」



さて、「ルンペルシュティルツヘン。KHM55」。

グリムを手元に持っていながら、実は三週間ほど発見出来なかったのです。

岩波版の「ルンペルシュティルツヘン。」は「がたがたの竹馬こぞう。」とタイトルまで日本語訳になっていて、他の本のKHM番号からやっと見つけたわけです。

で、最近もう一つやってしまいました。

一般的に「いばら姫。」と知られているお話があるんですが、岩波版グリムでは「野ばら姫。KHM50」となっています。

いばら姫はペロー版もあるのですが、これがまったく見つからない。

そう、またタイトルが違ったんです。

ペロー版での邦訳はいばら姫ではなく「眠れる森の美女。」。

気がつかないとは。

二時間探した。

ふ〜。


補記

 コボルト、またはコーボルト。

 妖魔とされています。

 魔力を持つものは名前を知られると、その魔力を失うとされています。


 
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