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お盆と閻魔様のお話。
  命の蝋燭
    閻魔さまは仏教と共に日本にやって来ました。
  閻魔さまの仏典、「盂蘭盆経」の成立は中国で、 「仏説閻羅王五天使経」「閻羅王授記四衆逆修生七往生浄土経」の 合わせて三つが中国から日本に伝来したのです。
  ではそれ以前の閻魔様はインドから来たのでしょうか?
  閻魔さまの起源はア−リア人の神話にあります。
  ア−リア人はコ−カサス北部、又はカザフ・キルギスの草原地帯に住んだとされ、 紀元前1500年以上前、 西方に移動した部族がギリシャ人、イタリア人の祖先となり、 東方に移動した部族がインド人とイラン人の祖となりました。 彼らの神話はインドではヴェ−ダ聖典として、 イランではアヴェスタとして今日まで伝わっています。
 
  「ヴェ−タ」上の閻魔さまはヤマ(Yama)、 太陽神ヴィヴィスヴァットの息子で、彼は最初の人間とされています。 彼は死者の王として、最高天にある楽園を支配しています。
  「アヴェスタ」上の閻魔さまはイマ(Yima)、 ウィ−ワフワントの息子、人類最初の死者で死者の国の王とされています。 イラン人の神話によると彼は混合の世界で最初に大地の支配者となりました。 彼の治世は人間の黄金の時代とされ、人間はまだ死を知らず、 大地は肥沃で寒さも暑くもなく生活は豊かでした。
  三百年後、人間が増えすぎたため、イマ王は黄金の杖と鞭で大地をたたき 三分の一大きくしました。そして再び、三百年後同じ様に大地を大きくし、 九百年後にはちょうど二倍にしました。
  そして千年後、イマ王は罪を犯してしまいました。 この罪は定かでなく、信仰が揺らいで疑惑に捕われた事とも、虚言を吐いたとも、 また尊大になって自らを神とし自分に牡牛の犠牲を捧げる儀式を行ったとも、 人々を喜ばせるため牡牛の肉を食べさせた事だともされています。
  イマ王が罪を犯した結果、地上に冬と死が訪れました。 そしてイマ王は自分の弟に体を二つに裂かれ殺され、 または悪の蛇王アジ=ダハ−カに王位を奪われ殺され、 最初に死んだ人間として死者の国の王になったのです。
   また、ゾロアスタ−教の異説では、 イマは不死で、冬の到来に備えて、大地の下にワルというシェルタ−を築き、 健康で最良な人間や動物、香りや味の良いすべての植物の種子を入れたと されています。
  ワルの中では太陽や月、星に似た光に照らされ、 一年が一日のように過ぎ、夫婦は四十年に一度、子を生み、 すべてが時の終りまで幸せに暮らすとされています。
   ほとんど創世神話、アダムとイブのもとの形となっています。
  命の蝋燭。
    蒸しかえるような暑い夜でした。
  源造は暗い道を急いでいました。隣村での親戚の葬式が長引いたのです。 峠を越えて、丁度村の手前にさしかかった時、 源造は道のかたわらにうずくまっているお婆さんを見つけました。
  お婆さんが苦しそうに水を欲しがるので、 源造は井戸のある所まで背負い、水を飲ませました。 「あぁ、冷たい。生き返るようじゃ。」 お婆さんは桶いっぱいの水を飲み干すと、もういっぱいごくんごくんと音をたてながら水を飲みました。
  
  お婆さんは懐から蝋燭を一本出すと、源造に渡しました。
「この蝋燭は命の蝋燭じゃ。 明かりを灯すと死神が見える。」 源造はえっ?と蝋燭を見ました。
「それを持って病人の家に行って灯して照らしてみなさい。 もしその病人の足の方に死神が見えたら、その人はもう助からん。 じゃが、頭の方に見えたら、助かる。」
お婆さんは身を乗り出すと、源造の耳元でささやきました。
「そこで、こう唱えるのじゃ。 アヤラカモクレン、カンキョウチョウ、テケレッツのパァ。」
源造はお婆さんの言う通りに言って見ました。 「アヤラカモクレン、カンキョウチョウ、テケレッツのパァ?」
お婆さんはニッと笑いました。
「するとな、病人がイッペンに治る。 お前さんは明日から医者になって稼ぐがえぇ。」
「あ、ああっ・・・。」 源造はうなずきました。
「よいな、アヤラカモクレン、カンキョウチョウ、テケレッツのパァじゃ。」
そう言うとお婆さんは源造の前から暗闇に溶け込むように消えました。
    しばらくすると町の大店の坊ちゃんが病気になり、
  大勢の医者が手当てしましたがいっこうに治りません。
  あたりにはもう医者はいなくなり、治してくれる者なら、
  どんな大金も出すと、その店の主人は触れ回りました。
    源造は医者の格好をすると、その店を訪れました。
  十歳くらいの男の子が布団に寝ていました。
  源造はそばに座ると蝋燭に火を灯し、男の子の側を照らしました。
  黒いものがいました。
  それが死神でした。
  痩せた長い顔に口と穴のような小さな目がありました。
  死神は男の子の頭の所に座って、じっと男の子の顔を見ていました。
    源造は、お婆さんの言う通り、
  「アヤラカモクレン、カンキョウチョウ、テケレッツのパァ。」と、唱えました。
  すると枕元にいた死神は、源造の顔を睨みつけると、
  どこかに吸い込まれるように消えていきました。
  すると男の子はパチッと目を覚まし、起き上がりました。
  源造はフゥとその場にへたり込んでしまいました。
    男の子が元気になったので主人は喜んで源造に千両箱をひとつ、
  お礼に渡しました。
  源造は思わぬ大金に驚きました。
  これでいろんなものが買える。
  嫁さんに着物を買ってやろう、母ちゃんをどこかに連れていってやろう、
  あれもしてやろう、これもしてやろうと考えながら家に急ぎました。
  
    
    源造が帰ると家の前で女房のミヨが待っていました。
  ミヨは源造を見つけると、源造のお母さんが倒れたと言いました。
  源造は驚いて母のいる実家へ走りました。
  実家では母が布団の中で唸っていました。
  兄夫婦と弟が二人、座っていました。
  源造はあの蝋燭に火をつけると母を照らしました。
  あの黒い死神はお母さんの足下にいました。
  源造は、息を呑みました。
  母ちゃんが死んでしまう・・・、どうしたらええんじゃ?
  「源造、どうした? 顔が真っ青じゃ。」
  兄が聞きました。
  弟達も源造の顔を見ました。
  「兄ちゃん達、俺が合図したら母ちゃんを布団事、くるっと廻して、
   頭を足の方へ、足を頭の方へ向けてくれ。 ええな。」
  「源造、何をいうとる? 母ちゃんは大変なんじゃぞ。」
  「ええから、俺の言う通りしてくれ。 頼む。」
  兄達は変な事を言うと思いましたが、源造の様子が普段と違うので、
  言う通りにする事にしました。
  兄夫婦と弟達は布団の端を持ち、源造の合図を待ちました。
  「よし、廻してくれ!」
  源造の合図で四人はお母さんを布団ごと回して、向きを変えました。
  母の足下で顔をじっと見ていた死神は、急に母の顔が目の前に来て、
  何が起ったのかわからないようでした。
  「アヤラカモクレン、カンキョウチョウ、テケレッツのパァ!」
  源造は急いで呪文を唱えました。
  死神は源造の顔をキッと睨みつけましたが、
  そのまま吸い込まれるように消えてしまいました。
  すると母は目を開け起き上がると、あたりを見回し、
  「あれ、お前達、どうした?」と言いました。
  もとの元気な母でした。
  源造はホッとして蝋燭をしまいました。
    源造は兄の家を後にして自分の家に向かいました。
  あたりはもう暗くなっていました。
  しばらく歩くと、目の前にあのお婆さんが現れました。
  「源造さん、あんたはとんでもない事をしちまったね。」
  お婆さんは悲しそうに源造を見ました。
  「お婆さん、俺は母ちゃんを助けたかったんだよ。」
  源造は困ったようにお婆さんに言いました。
  「じゃがの、あんたは死ぬ運命にあるものを助けてしまったんじゃ、
   その命がどこから来たのか、わかるかい?」
  お婆さんは源造をじっと見つめました。
  源造には命がどこから来るのかなんてわかりませんでした。
  お婆さんはこれはダメだと言うように首を振ると、
  「それは、あんたの命じゃよ。」と言いました。
  源造は驚きました。
  「源造さん、あんたの命を元に戻す方法がひとつだけある。
   ついてきなされ。」
  お婆さんはそう言うと、山の中へと歩き出しました。
    お婆さんは源造を岩が切り立つ谷へ連れてきました。
  岩が幾重にも重なり、そこには大きな穴が開いていて、
  お婆さんはその中に入っていってしまいました。
  源造は穴の奥へお婆さんを追いかけました。
  穴の中はすえた匂いがしていました。
  あの黒い死神と同じ匂いでした。
    どのくらい歩いたでしょうか。
  お婆さんは立ち止まって源造を手招きしました。
  源造がお婆さんの側に立つと、お婆さんは奥の方を指さしました。
  そこには何千、何万もの蝋燭が明かりを灯し、ゆらゆら揺れていました。
  「ここは人の寿命の間燃え続ける命の蝋燭の洞窟じゃ。
   あの蝋燭の一本一本が、その人の残りの寿命なのじゃ。
   生まれたばかりの赤ん坊は長く、死ぬ前の人間は、
   ほうら、こんなに短い。」
  源造は蝋燭を見ました。
  たくさんの蝋燭はそれぞれ長さがまちまちで、長いものもあれば、
  今にも消えそうなものもありました。
  「お前にやった蝋燭は、命の蝋燭じゃ。 ただし、だれのものでもない。
   お前は自分の母親を生かすために自分の寿命を母親に与えてしまった。
   お前の蝋燭は今にも消えそうになっておるはずじゃ。
   お前の蝋燭が消える前に、持っている蝋燭に火を移すのじゃ。
   それでお前の寿命は蝋燭の長さの分延びる。」
  源造は持っている蝋燭を見ました。
  二回使ったため、少し短くなっていました。
  「さぁ、時間がない。 早く自分の蝋燭をお探し。」
  お婆さんはそう言うと源造の背中を押しました。
  源造は慌てて自分の蝋燭を探しました。
  蝋燭の前にはそれぞれ名前が書いてありました。
  源造は上も下も、短くなっている蝋燭を探しました。
  そして源造と書いてある蝋燭を見つけました。
  もうほとんど蝋燭は無くなっていて、芯が傾いていました。
  源造は蝋燭を出し、火を移しました。
  手が震えました。
  消えないように慎重に蝋燭を近づけました。
  源造の蝋燭に火が移りました。
  すると、目の前に黒いものが現れました。
  死神でした。
  洞窟の中には、黒い死神があちこちにいました。
  そしてガサゴソ音を立てて歩いていました。
  目の前の死神は消えかかっている源造の蝋燭に顔を近づけ、
  息をふぅ〜っと吹きました。
  蝋燭の明かりは息に押されるとスッと消えてしまいました。
  一瞬、源造の足下の影が消え、そしてまた影がスゥッと出てきました。
  源造は蝋燭を消えた源造の蝋燭の上に立てました。
  すると、黒い死神は見えなくなってしまいました。
    源造が外に出るとお婆さんが待っていました。
  「いいかい? もう呪文を唱えてはいけないよ。」
  お婆さんはそう言うと消えてしまいました。
    源造は長い洞窟を歩き、外に出ました。
  すると洞窟も消えてなくなってしまいました。
  源造はその後何事も無く暮らしました。
  ただ、あれから源造には、あの洞窟のような匂いがすると、
  ガサゴソ何かが動く音が聞こえる事がありました。
  その後、決まってお葬式が出たのでした。
                 「命の蝋燭。」
   
    このお話は「死神」または「命の蝋燭」という題の昔話です。 元のお話は主人公は死んでしまう?ような暗示で終わっています。
  このお話、子供の頃何かで読んだ覚えがあるんですが、 蝋燭が洞窟かお堂の中に何本も蝋燭が揺らめいていて、 風がいつ吹くのか怖かったように覚えています。
  お盆の頃、お祭りの明かり、灯籠流しやお盆提灯などの明かりを見ると、 それが命の灯火のように見えて、なんだかはかないもののように、 自分は感じるんです。