それをかく鬼とはいふなりけり。

鬼は大和朝廷の形成過程で滅ぼされた先住民族で、それは縦穴式住居に住んだ居穴人であったり、またアイヌやイヌイット、ロシア系のオホーツク人だったと思われています。

そこに目には見えない超自然的な力や、得体のしれないなにか、死者、そしてその魂と死の国、洞穴に暮らし、岩穴に住すなど、さまざまなイメージが重なって、鬼という概念ができ上がったようです。


そしてもう一つ、符号としての鬼、が登場します。


力すら持たぬ女性を死いる、巨大な権力や、恐ろしい力を持ったもの、犯人はわかっているが捕らえようもない、その名前を口にする事が、はばかれる時、そのものは「鬼」と呼ばれたのです。


「日本霊異記」の「女人悪鬼に點(けが)されて食(は)まるる縁」では、聖武天皇の時代(714〜748)の頃、大和国十市郡庵知村(あむちむら)の東、鏡作造(かがみつくりのみやっこ)の女、で名を「万(よろず)の子」という女性が、「鬼」の犠牲となっています。


万の子、は「かおかたち端正(きらきら)しく」、「高姓の人よばうになお辞みて年を経たり」、身分のよい家柄の人から、求婚されてたが、それを断り続けて、いました。


そのうち「彩の帛(しみのきぬ)三つの車」を贈られ、「父母はこれを見て、忽ち財に耽る心出で来て」富裕の人の申し出を受けてしまいました。


鏡作は伴造(とものみやっこ)で、中央と直結した富貴の家柄でした。その「万の子」の父母は地方豪族「高姓の人」の申し出を断り続け、「彩の帛」を贈った「富裕の人」を選んだ事になります。

それが地域の者の不満に火をつけます。


しばらくして「富裕の人」は「万の子」の元に通ってきます。

そして夜半、「万の子」の閨から「痛きかな。」と叫び声が聞こえてきた。

初夜の夜半の事で、両親もたいした事と思わず寝てしまいました。


翌朝、「万の子」の閨は、血にまみれ、そこには小さな指と頭が残されていただけでした。

その上、「彩の帛」は獣骨となり、車は茱萸の木となり投げ出されていました。

親達は子の頭を高価な「韓筥(からばこ)」に納めて仏事を営んだそうです。


 汝(なれ)を嫁に 欲しと誰。

 あむちのこむちの万の子。

 南無南無や。 仙さかもさかも持ちすすり。

 法(のり)申し山の知識。 誠に誠に。


 お前を嫁にというは誰。

 あむちのこむちの万の子。

 南無や危ないそのようす。 仙さかもさかも持ちすすり。

 法を申すは山ひじり。 まことにまことにご愁傷。


この凶事が起る前に童謡が起ったそうです。


童謡は「わざうた」、呪的な部分が含まれていて、この童謡には「万の子」に対する警告的な意味が含まれていたようです。


「万の子」の両親には地方の「高姓の人」への抵抗があり、その事を地域の者は良く思っていなかった。 

両親の「富裕の人」への了解は、自らの家柄の誇示であり、それが地域全体の不満の頂点へとつながった、のでしょうか。


結局この事件は「鬼」の仕業とされ、犯人の追及はなされなかったようです。


実際に山に住む僧、聖がかかわっていたかどうかもわかりませんが、本当の犯人がはっきりわかっていながら、被害者すら抗議も反論も出来ない事、詳述してはならない部分、理由を言うことがはばかられる部分。

伊勢物語では「それをかく鬼とはいふなりけり。」と言うと書きしるしています。



鬼の絵本
鬼のうで創作えほん 鬼のうで    創作えほん
赤羽 末吉
偕成社 ¥1,680 (税込)
鬼のおくりもの山の子ものがたり 2 鬼のおくりもの 山の子ものがたり 2
金田 喜兵衛 (著), 狩野 ふきこ
ひくまの出版 ¥1,365 (税込)
鬼の子太郎こわい話 ふしぎな話 鬼の子太郎    こわい話 ふしぎな話
奥田 継夫 (著), 太田 大輔
大日本図書 ¥1,121 (税込)
鬼説法 鬼説法
松風 総司 (著)
新風舎 ¥1,260(税込)
元気な鬼贈る絵本シリーズ (第2巻) 元気な鬼 贈る絵本シリーズ (第2巻)
まなべ ほうせい, その他
温羅書房 ¥1,050 (税込)
鬼の島 地獄を見た子どもの話 鬼の島 地獄を見た子どもの話
青山社 ¥1,530(税込)
鬼まつり創作民話絵本 鬼まつり    創作民話絵本
峠 兵太 (著), 高田 勲
佼成出版社
鬼の子ダボラ創作民話絵本 鬼の子ダボラ 創作民話絵本
高橋 忠治 (著), 村上 勉
佼成出版社 ¥948 (税込)
くろずみ小太郎旅日記〈その3...おはなし広場 くろずみ小太郎旅日記〈その3〉妖鬼アメフラシ姫の巻    おはなし広場
飯野 和好 (著)
クレヨンハウス ¥1,223 (税込)

 
 
Google
Web pleasuremind.jp