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三月ー花と少女の物語。
 
  見るなの座敷
    昔話のパターンに「見てはいけません。」と言われた主人公が、その誘惑に負けて見てしまう、と言うのがあります。
  本来は異類結婚譚で、嫁いで来た娘や通ってくる婿、または変じた妻との約束を破り、その正体を知ったが為に破局を迎える、というものをさすのですが、その一つの変形が「見るなの座敷」です。「見るなの座敷。」は、二つの系統があるようで、基本と思われる形は「鶯の内裏。」と呼ばれています。
  鶯の内裏。」
    あるところにお茶屋さんがありました。
  そこにきれいな娘さんが、毎朝一番にお茶を買いに来ていました。 こんな美しい娘は知らない。 番頭はどこの娘か不思議に思い、その後をつけていきました。

  娘はひとやま越え、長い野原を通って林の中にはいりました。 その中には立派な御殿がありました。 番頭は恐る恐る「こんにちは。」と呼んでみました。 すると中からいつものお娘さんが出て来て、「あら、番頭さん、よくおいでなさいました。 お上がり下さい。」とにっこり笑うと、中に招き入れました。
  そこは庭の見える座敷でした。 白い梅、赤い梅、橙の梅、いろんな梅が咲き誇り、鶯が枝に止まり、ないていました。 一羽が鳴くと、答えるように一羽が鳴き、続いて歌うように鶯が鳴きはじめました。
  番頭がみとれていると、娘さんがお菓子やお餅、海や山のごちそうを運んできて、もてなしました。
  娘さんは番頭さんをひとしきりもてなすと、「用事があるから出て参ります。 番頭さんはここで遊びながら留守番をしていてください。」と番頭に頼みました。 そして、「つぎの座敷は十二座敷だから、けっして見てはいけませんよ。」と、言い残して出て行きました。

  番頭は次の座敷が気になって仕方ありませんでした。 ふすまの向こうには何があるんだろう? ひとり残された番頭は、「見てはいけませんよ。」と言われた次の間を、こっそり開けてしまいました。
  襖の向こうは、お正月の座敷でした。 床の間には松竹梅、鏡餅、海老や昆布、橙などが飾ってあり、小さな子供が何人も赤い着物を着て甘酒を飲んでいました。

  次の間は二月の座敷。 初午(はつうま)のお祭りで、御稲荷さんの赤い鳥居が並び、大勢のお参りの人が玩具や金魚すくい、いろんな出店の間にあふれていました。

  三月の間はお雛さま、お内裏さまやお雛さま、五人囃子、そしていろんな遊び道具がありました。
  四月の間は花御堂、子供のお釈迦様が甘茶の中に立っておられました。
  五月の間は端午の節句、
  六月の間はお山参り、
  七月の間は七夕、
  八月はお月見、
  九月は十三夜、
  十月は秋祭り、
  十一月は夷講でした。

  次のふすまを開けると十二月の座敷でした。 最後のふすまでした。 このふすまを開けると、あの娘さんの言いつけを最後まで破ってしまう事になりました。 番頭は迷いました。 後には夷講の、にぎやかな声があたりに響いていました。
  番頭は最後のふすまを開けてしまいました。
  目の前には師走の正月支度で、忙しい町が広がっていました。

  その時、「ホーホケキョ!」とウグイスが鳴きました。 そしてたくさんのウグイスが、サァ〜ッと翔んでいきました。 すると屋敷は野原にかわり、番頭はその中に、ぽつんとひとり、立っていたのでした。

  後になって番頭は、そのお屋敷が鴬の内裏というめったに行けない所だと、知ったと言うことです。 
          「うぐいすの内裏。」

 

「みるなの座敷。」

    昔、あるところに良いお爺さんと、悪いお爺さんがいました。
  ある日、良いお爺さんが野原に立つ大きな木をギコリギコリと切っていると綺麗なお姫様が出てきて、「木を切らないで下さい、私の住むところがなくなりますから。」と頼みました。
「はぁ、そんなら木は切らないでおきます。」
  お爺さんが木を切るのをやめると、お姫様は喜んで、木の中に招き入れました。 木のうろをくぐると、そこには大きなお屋敷がありました。 そのお屋敷の中には、酒の匂いのする綺麗な水が流れていました。

  お姫様は木を切らなかったお礼に、お爺さんをもてなし、そして奥の部屋へと招きました。 「お爺さん、ここはお正月の部屋です。」 お姫様が招き入れた部屋はお正月の飾りが床の間に飾られ、コマや凧、そして甘酒の良い匂いが漂っていました。 次の部屋は二月の部屋、梅桃桜の花が一面に咲いていました。 三月の部屋はお雛さま、四月の部屋、五月の部屋と部屋は全部で十二ありました。
  「お爺さん、私はこれから町へ買い物に行ってきます。 この鍵を渡しますから留守番をしていて下さい。 その間、二月の部屋だけは見ないで下さいね。」お姫様はそう言うと買い物に出かけました。

  お爺さんは、お酒の流れる川からお酒を酌んで来て飲みながら留守番をして、お姫様の帰りを待ちました。 しばらくするとお姫様が帰ってきて、お爺さんにお土産のしゃもじを買ってきました。
「お爺さん、このしゃもじは、お鍋に水を入れて、ご飯炊けろ、ご飯炊けろと、いいながらかきまわすとご飯が炊け、お汁が欲しい時は、汁炊けろ、と、魚が欲しい時は魚と言えばそう言ってください。何でも望み通りになりますよ。」
  お姫様はそう言って、お爺さんをお祖母さんの元へ返しました。 お爺さんはお婆さんとお姫様の言う通りにしました。 すると、お姫様の言う通りお鍋の水から、ご飯にお汁、魚と好きなものが炊けました。

  そこにとなりのお婆さんがやって来て事情を知りました。 そして飛んで帰ると、自分のお爺さんに隣のお爺さんと同じようにするよう言いつけました。
  隣のお爺さんはお婆さんの言いつけ通り、木を切ろうしてお姫様と会い、お姫様の屋敷に招かれました。そして話しの通りお姫さまから鍵をあずかり留守番をする事になったのです。
  隣のお爺さんはお酒を飲みながらお姫さまの帰りを待ちました。 しかし、待っても待ってもお姫さまは帰ってきません。 隣のお爺さんは一月の部屋、三月の部屋とまわり、時間を潰しました。 二月の部屋以外はもう見てしまいました。 お酒も、もう飲めませんでした。 隣のお爺さんは言いつけを守れず、ついに二月の部屋を開けてしまいました。

  一羽の鴬がホーホケキョと飛んで行きました。
  すると屋敷は消え、隣のお爺さんは、真っ暗な夜の山の中にいました。


          「みるなの座敷。」

   
 

  「鴬の内裏」はある野原の一軒家に泊まり、という始まりのもの、また主人公となる男がお茶屋の番頭ではなく、木樵(きこり)であったり、お坊さんや炭焼きなどのものもあるようです。「見るなの座敷」のもう一つの形は二人のおじいさん型です。
  「みるなの座敷。」では部屋の代わりが十二の蔵であったり三つの蔵であったり、またお姫様のお土産がしゃもじではなく、使っても使っても無くならない一文銭、というのもあります。
  季節の部屋は「浦島太郎」の竜宮城にも、「酒呑童子」の屋敷にもありましたね。 「今昔物語」巻19-33には、ある僧を主人公に似たような話が載っているようです。

  一年をとおした世界を一瞬に感じる変幻性と、このお話の部屋が二月で、夢の残り香と現実の春の日だまりの暖かさへ続く終わりようが、このお話のすばらしさでしょうか。

  ◆ 絵本・参考図書 ◆
 
         
   
   
赤羽末吉さん!
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