アルゴ船座の伝説、前編。

とも座・らしんばん座・ほ座・りゅうこつ座の四つの星座は、もとは一つの「アルゴ船座」でした。

星座の中でもっとも大きなものでしたが、古代ギリシャのプトレマイオス四十八星座の頃にすでに四つに分けられていましたが、十八世紀、ラカイユによって、正式に四つにわけられたそうです。

アルゴ船座は、ギリシャ神話のアルゴ探検隊が、金羊毛を求めて航海に使った人類が最初に作った巨大船アルゴーが星座となったものです。

アルゴ探検隊、アルゴノーツ(Argonautes)のお話はギリシャのもっとも古いお話のひとつで、ホメロスの頃にはすでに知られており、おそらくイオニアのミレトス(Miletos)市民の冒険譚に、それ以前にあった同様の海上の旅のさまざまな物語が加わって出来上がったものとされてます。

クレーテウスの子、アイソンは、異父兄弟ペリアースにイオルコスの(Iolkos)王国を奪われました(または我が子が成長するまで王国を委ねた)。

そのため、アイソンは自分の子イアソンを、ペリアースの危険から避けるため、ケンタウロスの賢者ケイローンに預け、養育してもらいました。

ペリアースは、かつて王国について神託を求めた所、神は片方のサンダルの男に注意すべしと託宣しました。

ある時、ペリアースが浜辺でポセンドンに犠牲を捧げていた時、片方だけサンダルを履いた男が現れました。それが成長したイアソンだったのです。

ペリアースは、イアソンに、「もし、市民の一人に殺されるであろうと神託があった場合に、権力を持っていた場合、どうするか?」と、尋ねました。

すると、イアソンはなぜか「金毛の羊皮を持ってこさせるよう命じたら良い」と、答えてしまいました。

そのため、イアソンが王国の返還をペリアースに求めた所、ペリアースはイアソンに金羊毛を持って来るよう、イアソンに命じたのでした。

ペリアースは、実母を虐待したテューローを襲い、ヘーラーの神殿に逃れたテューローを祭壇の上で斬り殺し、その後もヘーラーを尊重しなかったため、ヘーラーの怒りを買っていました。

ペリアースが片方のサンダルを無くしたのも、老婆に化けたヘーラーを背負って川を渡り、失ったとも、金羊毛を取りに行く事になったのも、ヘーラーの計画によるものとも、されています。


イアソンは、全ギリシャに檄を飛ばし、英雄を集めました。

金羊毛を求める冒険を望む五十人(五十五人とも)の勇者が集まりました。

船はアテナ女神の助けを得て、イアソンがアイエーテス王の元で知り合いとなったアルゴスに、テッサリアの海港パガサイで建造しました。

アルゴスはペーリオン山から切り出した木材で五十の櫂の大船を建造しましたが、船首だけはアテナ女神が神託の聖地「ドードーナ」から切り出した樫の木を提供しました。

これは船首が人声を発するよう女神自身が切り出したとされています。

アルゴ船はパガサイで進水、この船には、予言者イドモーンも乗っていました。

イドモーンは知っている人の意味で、前兆により、この航海は成功するが、自分は死んでしまうと知ってしまいました。

しかしそのまま船に乗り仲間と、航海に出たのでした。


こうして、アルゴ探検隊の冒険がはじまったのですが、

航海→島→島→島へ、と言う風に次々に寄航して行くスタイルを初めて取った物語でもあります。

寄航した島の物語は、本筋と関係なくはさみこまれても、さしつかえ無いため、元の姿がどうだったのか?というのもわからないようです。

アルゴ船は、まず、レームーノス島に立ち寄りました。

この島は女だけの島で、アルゴンーツ達は彼女たちと交わり、一年の間、島で過ごし、それぞれ子供を作ったのです。

レームノス島では、島の女たちがアフロディテーを崇拝する事を怠ったため、女神は女たちが臭気を発するようにしました。

そのため、男たちはレームノスの女たちを棄て、トラキアから女を捕まえて来て妻としました。

この仕打ちに怒った女たちは、夫や父を殺害してしまいまったのです。

ただ一人、ヒュプシュプレーだけは、父を隠して助け、島の外へ逃がしたのです。

その後、ヒュプシュプレーは女王となり、アルゴノーツがやって来て、彼女はイアソンとの間に、二人の子、エウネオースとネプロポノスを生みました。

そして、アルゴノーツたちは一年をその島で過ごして、子供を作ると、再び冒険の旅に出ました。


アルゴ探検隊は次にキュージコス島に立ち寄り、キュージコス王に歓待されました。

キュージコスはテッサリアのアイネウスの子で、予言者メロプスの娘、クレイテーと結婚したばかりでした。

そのため、アルゴノーツの来島を多いに喜び、これを歓待、アルゴ探検隊は、夜になって、この島を旅立ったのでした。

しかしアルゴ船は強い風に会い、夜の海を吹き流され、見知らぬ島に漂着してしまいました。

その島の住人は襲撃、大きな争いとなってしまったのです。

しかしそこはキュージコスの国ドリオニアだったのです。

ドリオニア人はアルゴ船を海賊か、自分たちの敵ベラスコス人が襲って来たと思い、夜の間にお互いを知らずに戦い、アルゴノーツたちは、駆けつけたキュージコスを知らずに殺してしまったのです。

翌日、アルゴノーツたちは自分たちが戦ったのがキュージコスの国であると知りました。

そして、死者の中にキュージコスを発見したのです。

王の死を知った、王妃クレイテーは嘆きのあまり亡くなってしまい、ニンフたちがその死を悲しんで流した涙が、クレイテーの泉となったそうです。

アルゴノーツは王の死を痛み、葬ると、再び旅立ったのでした。


次にアルゴ探検隊は、小アジアのミューシア、キオスという所に着きました。

ヘラクレスには美少年のヒュラースという従者がいました。

ヘラクレスはドリュオプス人の王テイオダマースを討ち、その子ヒュラースを自分の従者とした、とも、ヘラクレスとヒュラースの関係を認めなかったため王を殺したともされています。

以来、ヘラクレスは美少年ヒュラースをつれ、アルゴ船にも連れて来ており、水を汲みに上陸、ヒュラースは泉を求めて森の中へ入りました。

しかし泉のニンフ達が恋してしまい、ヒュラースを泉に引き込み、彼は溺れ死んでしまったのです。

彼が泉に引き込まれる時あげた叫び声に、乗員の一人、ポリュペーモスは、ヒュラースが盗賊に襲われたと勘違いし、刀を抜いて助けに走りました。

途中でヘラクレスと会い、二人で夜通し森の中を探してさまよい歩きました。

そして、その間にアルゴ号は出航してしまい、二人とも乗り遅れてしまったのです。

ヘラクレスはミューシア人がヒュラースをさらったと思い彼らに捜索を命じました。

それは歴史時代になっても続き、キオスではヒュラースを探す儀式が行われていたそうです。

一方、ポリュペーモスはキオスに都市を建設、その都市の王となったという事です。


アルゴ船は、ヘレースポントスの西、黒海のトラキア側にある、サルミュデーッソスの王ピーネウスの国に停泊しました。

ピーネウスはポセイドンの子で、盲目の予言者でした。

しかしピーネウスは、彼が食卓に着くたびに、ハルピュイアが現れ、食事を荒らして食べられなくしてしまい、餓死寸前に追い込まれていたのでした。

ピーネウスは、最初の妻クレオパトラーとの間に二人の子がありましたが、その後、イーダイアーを娶りました。

イーダイアーは自分の子を跡継ぎに、とピーネウスに訴えましたが、ピーネウスは怒って二人の目を見えなくしてしまいました。<

ゼウスはこの仕打ちに怒り、ピーネウスに死か盲目か、どちらがを自ら選ぶようせまり、ピーネウスは盲目を選んだのでした。

しかし太陽神ヘリオスは彼をゆるさず、ハルピュイアをおくって彼の食物を奪い続けていたのでした。

(一説には、彼は神に与えられた予言の力を濫用し、明かすべきでない事を明かしたために盲目となたとしています。)

アルゴノーツは、ピーネウスにコルキスへの道を示してくれるよう彼に頼み、その代わりにハルピュイア退治を申し出たのです。

そして、ボレアースの息子、カライスとゼーテースは約束通りハルピュイアを退治し、ピーネウスは、コルキスへの道を示したのでした。


ピーネウスの予言では、航海の途中、シュムプレーガデス(打ち合わさる岩の意味=Symplegades)という岩が両岸にそそり立っている所があり、そこを船が通ろうとすると、岩が両方から相打って船を破壊する、そこをアルゴ船が通れるかどうか判断するには、まず鳩を飛ばし、鳩が通過する事が出来れば、アルゴ船も通過出来る、と言うものでした。

アルゴ船はコルキスへ向かう途中、二つのそそり立つ大岩の前に来ました。

この岩は、キューアネアイ(青黒色の岩=Kyaneai)と呼ばれ、まわりには打ち壊された船が数多く沈んでいたのです。

アルゴノーツたちは、まず鳩を飛ばしました。

すると大岩は鳩を挟み込もうと動き出し、鳩は尾の先の羽根を挟まれてしまいましたが、鳩は無事通過したのです。

岩は再びもとの位置に戻ろうと動き出しました。

それを見たアルゴノーツたちはいっせいに船を漕ぎはじめました。

そして、再び船を挟み込もうとする大岩は、アルゴ船の船尾の先を挟んで壊してしまいましたが、船は無事通過したのでした。

この岩は一度船が通過すると、二度と動いて船を打ち壊さないよう、運命づけられていたため、いらい動く事無く静止したという事です。


キューアネアイの岩を通過したアルゴ船は、黒海に入り、そして小アジアのマリアンディノース人の王リュコスの国に立ち寄りました。

その時、港は出兵の準備をしており、国中が殺気立っていました。

何が起こったのか?とアルゴノーツたちがたずねると、この国は隣国ベブリュケス人と不和で、リュコス王の兄弟オトレウスが、隣国の王アミュティスに殺されてしまい、復讐のため、出兵しようとしていたのです。

アルゴノーツたちは、この戦いに加わり、アミュティスを倒しました。

しかし予言者イドモーンは、この争いの中で猪に突かれて死に、また舵取りのティーピスも死んでしまったのです。

リュコス王はアルゴノーツを歓迎し、イドモーンとティービスの葬礼を盛大に行い、自分の子ダスキュロスを航路の案内に、アルゴ船に乗せて、送り出しました。

こうして、アルゴ船はデルモードーン河口を通り、パーシス河口のコルキスに到着したのです。

   後編に続く。


 
 
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