すばるの伝説その二。

ミクロネシアの伝説です。

星々の母はリゲタネル(ぎょしゃ座カペラ)で、長男をヂュムール(アンタレス)、末っ子をジェブロ(昴)と言いました。

リゲダネルの子供たちは天から降りて来て、老いた母の暮らしているアイリンラブラブの島に住んでいる母を訪ねました。

そしてそこで兄弟たちは相談して、この島の東にある島に早く着いた者を、星の王にしようと約束しました。

そこで兄弟たちは大急ぎで船の支度をしました。

老母リゲダネルは、まず長男ヂュムールの船に行って「乗せて行って欲しい。」と言いましたが、母の持ち物の七つ道具が重く、船足が遅くなるのを嫌って、ヂュムールは断りました。

それから母は子供に順々に頼みましたが、皆断り、末っ子のジェブロだけが、快く母を迎え、七つ道具と一緒に乗せました。

兄弟たちは、船を海に浮かべるとかいで漕ぎ出し、東の島へ向かいました。

母はジェブロに品物をひとつずつ船に持ち込ませ、船のどこに乗せ、どこに取り付けるか、教えました。

取り付けに手間取りましたが、風がさぁっと吹くと、帆がパァッとはって、船は飛ぶように海を走りました。

母の道具は、その時まで誰も知らなかった帆具だったのです。

こうしてあっという間にジェブロの船は先頭のヂュムールに追いつきました。

するとヂュムールは長男の権威をふるって、弟に船を渡せと迫りました。

ジェブロはしぶしぶ承知しましたが、母のリゲダネルは船を渡すとき、帆柱を支えていた柱を船から引き抜き、「島まで泳ぐんだよ、ジェブロ!」と叫ぶと、その柱と、ジェブロとともに海に飛び込みました。

 帆が倒れそうになり、ヂュムールは帆柱を背負ったため、船はヨロヨロヨロヨロ海の上をあちこちに進みました。

そして、その間にジェブロと母は東の島に泳ぎ着き、約束通り星の王となりました。

そしてヂュムールはと言うと、背が曲がってしまったので、二度と弟のジェブロに会うまいと決心したそうです。

それからジェブロの昴が空に昇ると、ヂュムールのアンタレスが急いで西に沈むのだそうです。


次にインドネシアの伝説です。

インドネシアでは、すばるをタマンカバと言い、「羽ばたくおんどり」という意味で、顔がすばる、体がオリオン、尾がおおいぬ座のシリウスという星座だそうです。

インドネシアでは、この空の鳥が東の地平から中空にかけて現れる季節を、一米作の正月としています。


タマンバカはある部族の酋長でした。

ある時、天に昇りましたが下界へ下りる道がわからなくなりました。

そこで、星々に帰り道を尋ねると、「二股に分かれた道に出たら左にいくがよい。」と言われました。

タマンバカはその通りに行ってみると、川べりに出ました。

木の枝が橋にかかっていたので、渡ろうとするとひどく揺れて渡れませんでした。

そこで、後戻りして、右の道を行ってみると、すばるの所に出ました。

すばるの住人は、タマンバカにいろいろ農作の事を教えてくれ、タマンバカはいろんな事を学びました。

ある日の事、タマンバカが耕地に昇ってみると、下に下界が見えたので急いで飛び降りました。

そして、降りた所は、自分の家の近くだったのです。

タマンバカは家に帰ると、部族の者に天上で覚えて来た農作の方法を教えました。

ある日、タマンバカは夜空を見つめて言いました。

「俺は七日の後に石になる」

すると、七日後、タマンバカは石となっていました。

いまでもそこには大石が祭ってあり、それ以来、すばるをタマンバカと呼ぶようになったそうです。

すばるは農作の時を告げる星ですが、このようにすばるが農作の技術を教えたという伝説は世界では例が無く、珍しいそうです。


最後に、北ボルネオのビサワウ族に伝わる伝説です。

昔、この地方では、タピオカイモと、紫イモと、マメを常食としていて、米を作る事をしりませんでした。

ある年、村人たちが、イモと豆を植え付けて畑のまわりに垣をめぐらしました。

そして何日かたって草取りにやってくると、いつの間にかヤマブタが柵の中に入り作物をサンザン喰い散らかした後でした。

村人はがっかりして帰りました。

ところが次の朝の明け方、村人の中の一人の男の夢枕に老人が現れました。

男が夢の中でその老人に、ヤマブタが作物を荒らした話をすると、「垣のヘリにバネ仕掛けのワナを仕掛けるがよい」と教えてくれました。

男は目が覚めると、畑に出かけて行き、老人の言う通りにワナを仕掛けました。

四日たって、畑に行ってみるとヤマブタがワナにかかっていて、もう腐っていました。

それを杖でつついてみると、首がもげ、下あごも、歯も首から抜けてしまって、持って帰って食べる事も出来ませんでした。

その夜の夢に、再び老人が現れました。

男がヤマブタの話をすると、「では、杖でつついてみたか?」と聞きました。

そうしたと答えると、「それでよい。今年は米を作ってみるがよい。それにはよその部落に行って、籾をゆずってもらえ。」と教え、そして、「お前がつついたブタのひたいに、ブツブツがあったろう。それをブルブルと名づけよう。下あごをロルと呼ぼう。バネのワナにも名を付けよう。そして残らず空に上げて星にしよう。」と言いました。

そこで男が、米を作る季節を尋ねると、「日が暮れて、ブルブルとロルとワナの星が空に出るのを見るがいい。ブルブルが空の高さの四半分まで昇ったら、その時に種を撒くのだ。ロルがその次に、ワナが最後に昇る。」と答えました。

そこで夢がさめ、男は外に出て夜空を見ました。

虚空に、ヤマブタのポチポチも、下あごも、ワナも、星になって輝いていました。


こうして、村では米が作られるようになり、今でもビヤサワ族は、この三つの星々が日の入り七時頃のぼる時を種まきの目当てとしているそうです。

マライ語で、すばるは「ビンタン・ブルブル」で、「数十の星」の意味だそうです。

下あごのロルはヒアデス星団、ワナの星はオリオンをさしているようです。


 
 
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