牡牛座の伝説。

牡牛座には、日本では「昴星」と呼ばれているプレアデス星団と、「つりがね星」と呼ばれているヒヤデス星団があります。

ヒヤデス星団を中心に、アルファ星アルデバラン、ベータ星エルナト等の六つの星と共に、V字型をつくり、これが二つの角と顔になっています。

プレアデス星団は、牡牛の肩の部分に当たり、青白い星が六〜七個あつまって見える散開星団です。そのため、すばる以外に「六連星(むつらぼし)」とも呼ばれています。

牛は、馬より扱いやすく、ロバよりも力持ちで、ヤギの五倍の肉が取れる家畜で、紀元前三千年ほど前、約五千年ほど前に家畜となったと考えられています。

古代エジプト、メソポタミア、ギリシャ等で共に暮らし、そのため、神聖な動物と考えられる事も多く、神と考えられた時代もありました。

残念ながら、牛の神格化は時代とともに消え、ミノタウロス等の怪物として扱われるようになり、現在では、もとの神話的姿は良くわかっていません。


「白い牛と王女エウロペ」

エウロペは、紀元前十五世紀頃から地中海東岸、今のシリア・タルトゥースからイスラエル・カルメル山に続く海岸沿いの南北に細長い地域にあったフェニキア(Phoenicia)の王、ポイニクス(またはアゲーノール)とテーレパッサの娘でした。

ある時、エウロペは、水辺で友人達と花を摘んで遊んでいる時、父の牛の群れにまじって悠然と草をはんでいる白い牡牛に気がつきました。

その牡牛はつやつやした毛並みで、その様子はどうどうとして、穏やかな様子でした。

>

エウロペは魅かれたようにこの牡牛に近づき、優しく撫でると、牡牛はゆっくりと彼女の前にひざまづいたのです。

エウロペは牡牛を抱きしめ、その背に乗り、その角に花輪を編みはじめました。

すると突然牡牛は立ち上がり、一飛びに海に飛び込むと、そのままエウロペを乗せたまま海を渡りはじめ、エウロペはどうする事も出来ず、その牡牛の背中にしがみついたままでした。

牡牛とエウロペは海を越えてクレタ島の海岸へつき、ゴリュテュンの泉の側で休みました。

その牡牛はゼウスの変身した姿とも、ゼウスの使いとも言われています。

エウロペは三人の子、ミーノース、ラダマンテュス、サルベードーンを生み、のち、この三人はみなクレタ島のアステリオーンの養子となり、エウロペは彼の妻となりました。

エウロペはクレタ島で「へローティア」と称する祭りを持っていました。

ゼウスは彼女の島の海岸を警護するために青銅の巨人タロスと、必ず獲物を捕らえる猟犬、必ずあたる投槍を与え、島を守ったとされています。


エウロペにはカドモスという兄弟がいました。

エウロペが白い牡牛に連れ去られた後、フェニキア王ポイニクスは、カドモスとその兄弟にエウロペの捜索を命じ、見つかるまで帰ってくるなと言い渡しました。

カドモス達はエウロペを捜索しましたが見つける事が出来ず、それぞれ島へ住む事にしました。

カドモスはデルポイの神託を受け、「牡牛がつかれて倒れ伏した地に一市を建設せよ。」との言葉通り、ベラゴーンの牛の群れの中にいた額に月の印のある牡牛を見つけ、その牡牛の後に従い、疲れて休んだ所にテバイ市を築きました。

カドモスはギリシャに文字を伝えたとされ、これはギリシャ文字がフェニキア文字に由来している歴史を反映していると言われています。

エーゲ海には紀元前三千年頃からクレタ島を中心とする地中海文明がありました。

この文明は前十六世紀頃最高度に発達、前十二世紀頃、ドーリア人(古代ギリシャ人の一種族)の侵入で滅びました。

>

エウロペの物語はクレタ島、エーゲ神団由来のものと考えられるのですが、ギリシャ本土に移り、原初の形態を失って原型がわからなくなっているそうです。

クレタ島の神々は、動物と人間の特徴を合わせ持っています。

牡牛もその一つとされ、エーゲ海では牡牛は力と創造エネルギーの象徴なっていて、ミノタウロス、ミーノースもその特徴を残しているそうです。


「牛になったイオ」

もう一つのギリシャ神話は、イオの神話です。

河の神イコナス(イアソス)とメアリーの娘で、アルゴスでヘーラーの神殿の女神官でした。

ある時、イオは夢の中で、レルネー湖畔に行き、ゼウスに身を任せよと命じられました。

父親が神託を問うたところ、その命に従うべしとの神託がくだり、イオはレルネー湖畔に行きました。

しかしイオは、ゼウスとたわむれている所を、ヘーラーに見咎められてしまい、慌てたゼウスに牛へと変えられてしまったのです。

ヘーラーの目はごまかせたかに見えましたが、ヘーラーはイオの変身した牛をゼウスから無理矢理もらい受けると、百の目を持つ巨人アルゴスを番人につけ、昼も夜もイオを苦しめました。

イオの側に父や姉妹が来てもイオだとわかりませんでした。イオの声は牛の声で牛の鳴き声だったのです。

ようやく砂地に角で「IO」と書き、家族に自分がイオだと知らせる事が出来ました。

しかし、アルゴスに追い立てられ、再び家族と離ればなれにされてしまったのです。

これを見たゼウスは、イオの元へ、ヘルメスを送りました。

ヘルメスは、葦の笛シュリンクスを吹き鳴らし、アルゴスの百の目を眠らせると、首を切り落とし退治しました。

アルゴスが倒された事を知ったヘーラーは、一匹のアブを放ちました。

アブは牛のイオにまとわりつき、苦しめました。

イオはたまらず逃げ出し、海を泳ぎ渡り、あちこちを逃げ、トラキアの海峡を渡り、エジプトに渡ったのです。

そして、そこでゼウスによってやっと人間の姿に戻り、ゼウスの子エバホスを産み落としました。

しかしエバホスは、ヘーラーの命によりクーレース達(ゼウスを育てた精霊)によりさらわれましたが、イオは我が子を探し出し、エジプトの女王となったのでした。

イオは、エジプトのイシス女神が牛形の神ハトホル神と同一視されている事から、またイシスと同一視されているそうです。

イオは、史実としては、イナコス王の娘で、海賊にさらわれエジプト王に売られてしまい、エジプト王はその償いのためにイナコス王に牛を送りましたが、王はすでにこの世をさっていた、と言うものだそうです。

イオは、死後、星になったと伝えられ、また、アルゴスは孔雀に変身したとも、ヘーラーがその目を取って孔雀につけたとも言われています。


 
 
Google
Web pleasuremind.jp