ヘラクレスの英雄譚。

ヘラクレスは、ギリシャ神話中最大の英雄で、ホメロスの中ですでに「ケルベロスの捕獲」「トロイアへの遠征」「ネレウス家との戦闘」「死神の征服」などの物語があり、これらの武勇伝から次第に超人的な英雄物語が紡ぎ出され、伝説群が生まれました。

ヘラクレスの誕生は、少々入りくんでいます。

ペルセウスの孫のアムビトリュオーンは、妻アルクメオネーの父で、自らの叔父にあたる、エレクトリュオーンを誤って殺したため、亡命。 テーバイ市のクレオーンを頼って、この市に移り住みました。

アムビトリュオーンは、この時、妻の願いに答えて、テーレポエース人に対して遠征しました。

そして勝利の後、帰途につきましたが、この時、ゼウスがアルクメオネーに恋をし、アムビトリュオーンの姿に変身して、アルクメオネーのもとに訪れ、一夜を共にしました。

翌日、本物のアムビトリュオーンが帰って来て、夜を過ごしたのですが、妻の様子がおかしい事に気がつき、妻に問いただした所、前夜も共にしたと答えたため、アムビトリュオーンは、驚き、予言者に何が起こったのかたずね、事の真相を知りました。

こうしてアルクメオネーはゼウスの子ヘラクレスと、アムビトリュオーンの子イーピクレスの二人を身ごもりました。

ヘラクレスが生まれる時、ゼウスはヘラクレスをアルゴスの王としようと、ペルセウスの末裔で、アルゴスの王者となるものが生まれようとしていると神託を下しました。

ゼウスの妻、ヘーラーは、ゼウスとアルクメオネーの仲を嫉妬し、ゼウスに、この日生まれた子がアルゴスの王となる事を誓わせ、お産の神エイレイトュイアに命じてヘラクレスの誕生を遅らせ、ペルセウスの子ステネロスの子、エウリュステウスを七ヶ月で先に生まれさせたのでした。

そして、ヘラクレス誕生の時が来たのでした。


ヘーラーは、ヘラクレスの誕生を邪魔しようと、お産の神エイレイトュイアと、運命の女神モイラ達が、戸口にすわり、腕と足をしっかり組んで、誕生を阻止しました。

アルクメーネーの友達で、プロイトスの娘、ガリンティスは、その事を知ると、

「ゼウスの命により子供が生まれた!」と叫びました。

その言葉に、女神達は驚いて立ち上がったため、魔法が解け、ヘラクレスが生まれました。

女神達は怒り、ガリンティスをトカゲまたはイタチに変えたたため、ヘカテは憐れみ、自らの聖獣としました。

ヘラクレスは成長して、ガリンティスのために聖堂をつくり、テーバイ人はヘラクレスの祭りの時、ガリンティスに供物を供えたという事です。

さて、誕生したヘラクレスは、ヘーラーの乳を吸って不死になったとする伝説があります。

これには二つの言い伝えがあり、

ヘルメスがヘラクレスを不死にするため、眠っているヘーラーの所へ連れて行き、乳を吸わせたのですが、あまりに強く吸ったため、女神は驚いて目を覚まし赤子をはねのけましたが、すでにヘラクレスは不死となった後で、その時ほとばしり出た乳が、天の川になったというものがひとつ。

そしてもう一つは、

ヘラクレスが生まれた後、アルクメーネーはヘーラーの嫉妬を恐れ、彼をアルゴスの近くにすてました。

そこへ、アテナとヘーラーが通りかかり、あまりに赤ん坊が立派なため、ヘーラーに乳を吸わせるよう求めました。ヘーラーは乳を吸わせました。

しかし、赤ん坊はあまりに強く乳を吸ったため、赤ん坊を払いのけましたが、アテナはアルクメーネーの所に赤ん坊を連れて行き、これでもはや恐れるものは無いと告げたそうです。


二人の子供のうまれた八ヶ月目の事です。

ヘーラーは、二匹の蛇を二人のベッドに送って殺そうとしました。

アルクメーネーは、蛇を見つけて、大声で夫のアムビトリュオーンに助けを求めました。

その時、ヘラクレスは立ち上がり、両手で一匹ずつをつかみ、蛇を絞め殺しました。

一説には、アムビトリュオーンが、どちらが自分の子か知ろうとして、蛇を投げ込んだともされています。

こうしてヘラクレスは無事に成長して行ったのです。


ヘラクレスは、成長とともに次々といろんな事を学んで行きました。

 アムビトリュオーンに戦車を、

 アウトリュコスに相撲を、

 エウリュトスに弓を、

 カストールに武器の使い方を、

 リノスによって竪琴を、学びました。

しかし、ヘラクレスは、リノスに罰っせられた時、怒って竪琴で彼を殴り殺してしまいました。

ヘラクレスは殺人罪に問われ、正当防衛として許されましたが、アムビトリュオーンは、このような事の再発を恐れ、ヘラクレスを牛飼場へ送りました。

ヘラクレスはここで成長し、身長は1.8メートル、目は輝き、筋力は優れ、矢と槍は必ず的をとらえ、誰の目からも、ゼウスの子である事は明らかであったそうです。

十八歳の時、キタイローン山に棲むライオンが、アムビトリュオーンと隣国テスピアイのテスピタイ王の牛を荒らしたため、ヘラクレスは王の宮殿にとまり、五十日間のライオン狩りを行いました。

王にはアルネオスの娘メガメーデーから生まれた娘が五十人おり、その五十人全員にヘラクレスの子をもうける事を望みました。

そのため、毎夜一人ずつヘラクレスと共に寝かせ、ヘラクレスは自分の元に来ているのは、一人と思い込み、すべての娘と契りをむすびました。

そして、この地を荒らすライオンをしとめ、その皮を身にまとい、その頭をカブトとしました。

このライオンのカブトと毛皮がヘラクレスの姿となるのですが、退治した地がキタイローンではなくヘリコーン山中であるとか、この皮はネメアのライオンとか、キタイローンのライオン退治の勇者はアルカトオスであるとか、さまざまな異説が伝わっています。


さて、このライオン狩りの帰途の事です。

オルコノス王エルギーノスは、父クリュメノスを、テーバイのメノイケウスに殺されたため、テーバイを包囲し、二十年間、毎年百頭の、貢ぎ物を送るようしいていました。

ヘラクレスは、この貢ぎ物を徴税する使者に出会い、彼らの耳、鼻、手を切り落とし、頭にこれを縄でくくりつけ、これを贈り物として持ち帰るよう命じました。

この仕打ちに怒ったエルギーノスは、再びテーバイに軍を進めました。

ヘラクレスはアテナーから武器を授けられ、テーバイ軍を率いて出陣し、エルギーノスと一騎打ちをして、これを倒し、反対にオルコノスから二倍の貢ぎ物を得る事となりました。


この戦闘で、ヘラクレスの父、アムビトリュオーンは戦死したとされ、また、テーバイのメノイケウスの子で、その時の王クレオーンから、ヘラクレスは娘のメガエラを与えられ、弟イーピクレスはその妹娘を与えられ、それぞれ妻として迎えました。

そして、ヘラクレスは弟とともに、幸せな家庭を築いて行くのですが、悲劇が待っていたのです。


ヘラクレスは、妻メガエラとの間に、何人かの子供をもうけました。その数は八人とも三人とも七人、五人、四人とも言われていますが、ある突然狂ったヘラクレスは、自分の子と、弟イーピクレスの二人の子を、次々に火の中に放り込み、殺してしまったのです。

このヘラクレスが狂気によって我が子を殺した伝説にはさまざまな異説があります。

ヘラクレスの狂気は、

  ヘーラーが嫉妬によってヘラクレスを狂わせた、

  ヘーラーが彼の罪をつぐなわせるために、エウリュステウスに使えさせようとした所、

  またはゼウスの神託にもかかわらす、アルゴスでエウリュステウスに使えようとしなかったため、ヘーラーが神意を示した、とされています。

またエウリーピーデーズ「狂えるヘラクレス」では、

  ヘラクレスが冥界にくだっている最中、

  エウボイアのリュコスがクレオーンを殺害、王位を奪ったため、

  帰って来たヘラクレスがリュコスを倒し、その感謝の意をゼウスに捧げようとした所、

  ヘラクレスが狂った、とされています。

  劇中ではメガエラと自分の子供を、エウリュステウスの妻と子と思って弓で射殺、

  父を、エウリュステウスの父、ステネロスと思って殺そうとした所、

  アテネによって胸を打たれて気絶、

  正気に戻って、事の次第を知り、自殺しようとした所を、テーセウスに救われる、事となっています。

こうして、ヘラクレスは大きな転機を迎えるのでした。


正気に戻ったヘラクレスは、メガエラをイーピクレスの子イオラーオスに託すと、自ら自分自身に、追放の判決を下しテーバイを去りました。

そして、ライオン狩りの時赴いた隣国テスピアイのテスピタイ王によって罪を清められた後、デルポイの神殿に赴き、アポロンにどの地に居住すべきか、尋ねました。<

そこで、デルポイの巫女は、それまで祖父の名をついでアルカイオス(Alkaios またはアルケイデス Alkeides)と名乗っていた彼をヘラクレス=ヘーラーの光栄と呼び、テューリュンス城に住み、ミュケナイ王となったエウリュステウスに十二年間奉公し、命ぜられた仕事を成すよう神託を授けました。またこの功業を成したあかつきには、彼が不死となると告げました。

ヘラクレスはここから十二の功業・冒険をするのですが、異説が多く、紹介されているものにも多くの違いがあります。

アポロドーロスは十のみを認め、その期間が八年と一ヶ月で終わったため、十二年満了となる残りの期間で残りの二つをやり遂げたとしています。

ヘラクレスは、ヘルメスより剣を、アポロンより弓を、ヘーバイトスより、黄金の鎧を、アテナより長衣(ヘプロス)を、神々から武具を与えられ、キタイローン(またはネメア)のライオンの皮を身にまとい、ネメアで切り取った棍棒を手にもった姿となったのです。


 「ヘラクレスの十二の冒険」へ、つづく。


 
 
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