矢座の神話。

矢座は、鷲座のアルファと白鳥座ベータの間の四等星と五等星の星が描く星座です。

昔はこの矢を鷲がつかんでいる形とも見られていたそうです。

この星座の神話の由来は、一般的には、日本人には良く知られているキューピットの矢、となっています。

キューピットの正式なギリシャ名は、エロス(Eros)で、ローマではクピト(Cupido)、またはアモール(Amor)です。

エロスは、神話上、かなり特殊で、最初は擬人化されていませんでした。

原初の卵があり、その卵が割れて、エロスという原初の力が生まれ、卵の殻が天と地になった、ともされています。

最初の頃、エロスはあらゆるものを結びつける力、と考えられていて、それから、アフロディーテと関連づけられるようになったそうです。


エロスの母子関係は、神話上たくさん見られるそうで、

 誕生とお産の神、エイレイテスの子。

 虹の女神、イーリスの子。

 ヘルメスと地下神としてのアルテミスとの子。

 アフロディーテとヘルメスの子(父はゼウス、またはアーレスとされています)。

等があるそうです。

また、後代の作家の創作により、エロスには兄弟がいるようで、

 アンテロースという兄弟は、

 愛に対して愛を返さない者を罰する神、

 愛に対して反対する神、

 一方愛に対してそれを報いる神とされています。

エロスはもとは恐るべき力を持つ無形の神として生まれましたが、

そのうち、美しい有翼の若者として描かれるようになり、

次第に、今のような赤ん坊のような姿になったそうです。


エロスの神話自体はなく、他の神話中に登場するだけで、唯一、二世紀頃のヘレニズム時代に「アモールとプシュケー」の中に登場するのみだそうです。


「アモールとプシュケー」

プシュケーは、とある国の王の末娘で、二人の姉がありました。

三人とも大変美しく、その中でもプシュケーは地上の言葉では言い現せない程の美女だったのでした。

しかし、姉の二人が結婚しても、プシュケーには、あまりに美しいためにもらうものがありませんでした。

両親は心配して、神託をうかがった所、彼女に花嫁の衣装を着せ、怪物の人身御供にすべしとの答えでした。

両親は驚き悲しみましたが、神託に従い、プシュケーに花嫁衣装を着せ、山頂の岩の上に残してさりました。

しかし、彼女は突風に持ち上げられ、深い谷間の奥へと運ばれて行ったのです。

深い眠りから目を覚ますと、彼女の前には、美しい庭園に囲まれた宮殿がありました。

プシュケーが中に入ると、扉が開き、彼女を中に招き入れました。

中には姿は見えず声だけがある不思議な召使い達がいて、すべての用は彼女の思いのままに、はたされました。

夜になり、宮殿の主の怪物があらわれ、やさしく彼女に近づいて、二人は夫婦となりました。

彼は夫婦となってもプシュケーに自分の姿を決して見せませんでしたが、彼女は幸せに暮らしました。

しばらくするとプシュケーは両親に会いたくなり、彼に里帰りを望みました。

彼は反対しましたが、妻の願いについに折れ、風とともに彼女を両親の元に運んで行きました。

両親の元に帰った彼女を家族は喜んで迎えましたが、プシュケーが幸せに暮らしている事をしると、二人の姉は嫉妬にかられ、プシュケーに燈火で夫の姿を見るよう勧めました。

風は再びプシュケーを宮殿に連れ帰りました。

プシュケーは、夜、自分の傍らに眠っている夫に、姉の言葉を思い出しました。

そしてそっと燈火で夫を照らしました。

そこには美しい青年エロース・アモールが横たわっていました。


しかし、その時、プシュケーの持つ燈火の一滴が彼の上に落ち、彼は驚いて目を覚ますと、そのまま空へと飛び去って行き、プシュケーは一人地上へ取り残されたのでした。


後悔したプシュケーは、夫を捜して世界中を探しまわります。

しかし、エロース・アモールは、燈火の一滴に焼かれ、母、アフロディーテの元で、動く事も出来ませんでした。

女神達はプシュケーを激しく憎んだのです。

そうとも知らないプシュケーは、神々から願いをはねつけられ、ついにアフロディーテに捉えられてしまいます。

そして、四つの難題をこなすよう言いつけられたのです。


一つ目の課題は、いろんな種類の穀物混ざった山を、夜までに選り分ける事でした。

プシュケーは途方に暮れましたが、蟻が同情して、これを変わりにやってくれたのでした。

二つ目の課題は、「輝く黄金の羊」の毛を一房、集めて来る事でした。

しかし黄金に輝く羊は、真昼の太陽に焼かれ、荒ぶっていて、近づく事さえ出来ませんでした。

プシュケーが戸惑っていると、葦がそよそよとなびき、「太陽の沈むまで近づかないよう」警告されます。

やがて日が沈むと、黄金に輝く羊はおとなしくなり、プシュケーはその毛を集める事が出きたのです。

三つ目の課題は、地下の冥府の川と黄泉の沼に注ぐ泉の水を水晶の器に汲んで来る事でした。

しかしその流れは、巨大な山から降りそそぎ、常に蛇が見張り、水の流れまでも声を上げてプシュケーを寄せ付けませんでした。

しかしそこにゼウスの化身の鷹があらわれ、プシュケーの持つ水晶の器を持つとかわりに水を汲んで来てくれたのです。

ゼウスは何度もエロース・アモールの力を借りていたため、プシュケーを助けたのでした。


最後の難題は、冥界の女王ペルセポネーから、美の箱を地獄から持ち帰る事でした。

プシュケーはほとんど地上まで持ち帰るのですが、好奇心に勝つ事ができず、ついに開けてしまいました。

しかしその箱には、美のかわりに深い眠りが入っており、プシュケーは、そのまま深い眠りについたのでした。

その頃、傷の癒えたエロース・アモールは、プシュケーを捜していました。

そして眠っているプシュケーを見つけると、その矢でついて、目覚めさせ、再び、抱きしめると、ゼウスものとへ飛んで行き、妻に迎える許可を得ました。

アフロディテーも息子を傷つけたプシュケーと和解し、そしてその後、一人の女神を生んだそうです。

  「アモールとプシュケー」


「アモールとプシュケー」は、二世紀ローマの作家アープーレイウスの「黄金のろば」の中の一遍として描かれています。

このお話は、エーリッヒ・ノイマン(ユングの高弟)によって分析され、女性の精神発達過程として、紀伊国屋書店から「アモールとプシュケー」=エリック・ノイマン(なぜか同じ出版社なのに、ノイマンの名前が本ごとに違う)として出版されています。

実は、作中でプシュケーは四つの難題を解決しなければいけないんですが、「成熟した女性は、この難題を失敗しなければならない」のだそうで(プシュケーは最後の難題を失敗してる)、「全部こなすと未成熟?そ〜ゆ〜のがアリなんだ」、とひっくり返った覚えがあります。

プシュケーは、「Psyche=魂」と言う意味で、ホメロスの時代の魂は、生きている人間の物質的な部分を失った弱い影のようなもの、と考えられていて、後のヘレニズム時代には、魂とエロース・アモール(愛)と結びつけて考えられるようになったそうです。

「黄金のろば」では、華やかになったローマ神話として描かれていますが、エロスに関しては古い時代の原初の神として、青年の姿をとったものと考えた方が良いようです。

ちなみに、プシュケーへの難題はさまざまな変形があって、比較すると面白いかもしれません。

  「矢座の神話。」


script type="text/javascript">  
 
Google
Web pleasuremind.jp