琴座-オルフェウスの竪琴。

ギリシャ神話で、琴座となった琴は、ヘルメスが波打ちぎわで拾った亀の甲羅に、七筋の糸をはり、音楽の神アポロンにおくった物とされています。

アポロンは、この琴を、音楽の九女神ムサイの一人、カリオペとの間に、生まれた子、オルフェウスに授けたとされています。

実はオルフェウスは実在の人物とも考えられていて、ホメロス以前の最大の詩人で音楽家とされ、オルフェウス教の創始者とされています。

彼は、「アルゴノーツの遠征譚」「神統紀」などに多くの詩を残していますが、それはすべて偽作で、伝説の伝えるようにホメロス以前にさかのぼって証明されてはいないそうです。

伝説上では、彼はオイアグロスまたはアポロンを父にムサイのカリオペ、またはポリュヒュムニアー、またはタミュラスの娘メニッペーとの子で、オリュンポス山の北側のトラキアで生まれたそうです。

アポロンより竪琴を授けられ、または自ら竪琴を作り、または七本の弦を九本とし、歌と音楽の名手となったそうです。

オルフェウスが琴を奏でると、森の獣達は、みな猫のようにおとなしくなり、彼の足下にうずくまり、激流は流れをとどめ、大波も穏やかとなり、木々も自然に彼に枝をさしのべ、岩石までもやわらかくなりました。

オルフェウスは、アルゴ探検隊に参加し、音楽でオールのリズムをとり、荒波を静め、セイレーン達の魔法の歌を、自分の歌をもって破り、難所を通過したのでした。


彼は、木の精霊ドリュアスの一人、エウリデュケを花嫁に迎え、熱愛していました。

ある日の事、エウリディケが、友達のニンフと川の岸に遊んでいた所、羊飼いのアリスタイオスが、彼女の美しさに魅かれて、あろう事か追いかけて来ました。

驚いてエウリディケは、逃げ走り、草の中のコブラを踏んでしまい、足をかまれてたちまち死んでしまいました。

オルフェウスは、亡くなったエウリディケを前に、気も狂わんばかりに悲しみました。

そして、どんな危険を冒してもエウリディケを取り返そうと、冥界へいく事を決心すると、そのままタイナロスの岬の側にある洞穴から、深い闇の底の冥界へと降りて行ったのです。


長い闇の洞窟を何日も何日も降り、幾日過ぎたのか、昼も夜もわからなくなる頃、広い広い暗闇の中に出ました。

そこには、暗闇よりももっと黒い三途の川が流れていて、ぼろぼろの服を身にまとい、長いあご髭の老人カロンが地獄の渡し船の前に座っていました。

オルフェウスはカロンに、自分を向こう岸に渡して欲しいと頼みましたが、カロンは生きているオルフェウスを渡す事は出来ないと断りました。

オルフェウスは竪琴をとると、歌を歌いながら曲を奏ではじめました。

カロンは黙ってオルフェウスを船に乗せると、向こう岸に渡してくれました。


そこには冥府の門が大きくそびえ立ち、門の前には三つの首を持つケルベロスが待ち構えていました。

そして、青銅を轟かせるような吠え声を、オルフェウスに浴びせました。

しかしオルフェウスの歌と竪琴を聞くと、ケルベロスも吠えるのを止め、尻尾を垂れて、オルフェウスを通しました。


オルフェウスは竪琴を奏で、冥界を進みました。

亡者達は皆すすり泣き、

咽の渇きに悶え、水を飲もうとすると水は逃げ、葡萄に手を伸ばすと枝を空に跳ねる責め苦を受けているタンタロス王も、咽の乾きを忘れ、聞きほれました。<

そして、大きな岩を山の頂まで押し上げ、頂上に置こうとすると再び下まで転げ落ち、押し上げているシーシフォスは岩の上に腰かけ、火の車にしばられ、それを廻し続けているイキシオン王もその車を止め、ふるいで水を汲み続けているダナウスの娘達も、その手を止め、執念の女神フーリエーさえ、その頬を初めて涙で濡らしたのでした。


オルフェウスは冥界の王ハデスの前に立ちました。

そして竪琴をかなで歌を歌いながら、亡くなった妻エウリディケを生き返らせて欲しいと懇願しました。

冥界の亡者すべてがすすり泣く中、ハデスは冥界の掟を守り、金の冠をかぶった頭を横に振りました。

しかし、デメテルの娘ペルセフォネは、オルフェウスを哀れに思ったのか、涙を流して、王にエウリディケを生き返らせてくださいと願いました。

ハデスは、妻の願いにおれ、亡者の中からエウリディケを呼び出すと、オルフェウスに地上に連れ帰る事を許しました。

「よいか、地上に出るまでは、妻の方を振り返ってはならぬぞ。」

ハデスはオルフェウスに、固く言い渡したのでした。


オルフェウスは喜び、妻を後ろに地上を目指して歩き始めました。

冥府を出て、カロンに三途の川を渡してもらうと、長い地上への道を上りました。

エウリディケにあふれるような想いを歌いながら、道を歩き続けました。

そして、地上からの潮風が、オルフェウスの頬を心地よくなでました。

地上はすぐそこでした。

オルフェウスは地上へと急ぎました。

そして、太陽の光が洞窟の中に差し込むと、まだ地上に出ていないのに、嬉しさのあまり、エウリディケの方を振り返ってしまったのです。


その瞬間、深い闇がエウリディケを包み込むと、恐ろしい勢いで、冥府へと引き戻したのです。

エウリディケの引きつった顔に、オルフェウスは手を伸ばしましたが、空をつかんだだけで、いつしかオルフェウスの前から、見えなくなってしまったのです。


オルフェウスは、気が狂ったように冥府へ引き返しました。

しかし三途の川のカロンは、二度とオルフェウスを船に乗せようとせず、七日七夜、歌を歌い続けた後、ついに気がふれてしまったのでした。


オルフェウスは、妻を求めて悲しい歌を歌いながら故郷の野山をさまよいました。

そして、オルフェウス教をつくり、その創始者となったのですが、女性の入信をことわり、妻以外の女性を近づけようとしなかったため、トラキアの女性は、ディオニッソスの祭りで、オルフェウスを八つ裂きにして殺し、その遺体をヘブロスの川に投げ捨ててしまいました。


音楽の女神ムサイ達は、彼の体を集め、リベトラの森に埋めました。以来、その森に鳴く夜うぐいすの声は、美しく似るものもないといわれています。

しかし、オルフェウスの首は見つかりませんでした。


不思議な事に竪琴は悲しい調べを奏で続け、オルフェウスの首をのせたまま、川を下って行きました。

オルフェウスの首は、弱々しく歌い続け、ついに生みに出ると波に運ばれ、レスボス島に流れ着き、そこで落葉に埋もれながら、歌を歌い続けました。

そして、この島に葬られる事となったのでした。


神々はこれを哀れに思い、竪琴を空にあげました。

オルフェウスはエリュシオンの野に赴き、この野におくられた至福の人々に、歌をもって楽しませているという事です。

星の静かな夜、竪琴の星座は美しい調べを地上に奏でる事があるそうです。

   「オルフェウスの竪琴。」


 
 
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