七人の星。

北斗七星には、ひとまとまりの星座としてではなく、七つの星を一人一人として擬人化した神話や物語がたくさんあります。


アラビアでは北斗七星を棺を引く三人の娘としていますが、これは、北極星をアル・ギェディ、またはアル・ヂャディと呼び、これは殺し屋という意味だそうです。

これはアル・ナーシュを殺したからで、父を殺された三人の娘は遺体を入れた棺を引きずりながら、今も復讐の機会を狙って、北極星=殺し屋のまわりをまわっているんだそうです。


インドでは、北斗七星は仙人とされています。

ヒシャクの柄の方から、マリーチ、バシシュタ、アンギラス、アトリ、バラスシヤ、パラアッハ、クラッツの七人で、それぞれ妻と仲良く、暮らしていたそうです。

その暮らしを見ていた月の二十七人の妻の一人、スワハは、ねたましくおもい、仙人たちの妻に化け、浮気をしているかのようによそおいました。

仙人たちは妻が浮気をしていると勘違いして、離婚してしまいましたが、バシシュタ仙人だけは妻を信じて、離婚しませんでした。

後にバシシュタ仙人はミザールとアルコルになり、今もそばによりそっています。

離婚された六人の妻は、遥か遠くにうつり、プレアデス星団となったそうです。


ミザールは二重星で、アルコルという四等星が側にあります。

アラビアでは兵士の視力を確かめる「サイダク(めだめし)」と呼ばれているそうです。


最後に中国のお話です。

北斗七星は人ではなく豚になっています。


「北斗と豚」

唐の開元の時代、一行上人という高僧がありました。

天文や暦の学者で、仙人の術にも通じていたため、時の天子、玄宗皇帝にもたいそう敬われ、天師という号をさずけられていたそうです。

ある時、上人がすむ渾天寺(こんてんじ)に、王婆というお年寄りが尋ねて来ました。王婆は上人が貧しかった頃、たいそう親切にしてくれた人で、上人は喜んで迎えいれました。

王婆は上人を見ると、手を合わせて頼みました。

「私のせがれが、人殺しの疑いをかけられ捕らえられてしまいました。どうか上人のお力で助かるようにしてくだされ。」

上人は困りました。

「国の掟は私が口添えして、曲げさす事は出来ぬのです。」

上人の返事を聞くと、王婆はすっかりしょげ返り、とぼとぼと帰っていきました。


王婆の帰った後、上人は、しばらく考え込んでいました。

そして顔を上げると、寺の一室に大きなかめを据えさせ、二人の寺男を呼ぶと大きな布袋を渡しました。

「北の町外れに荒れた庭がある。そこに隠れて待っていなさい。

日の暮れるまでに、やってくるものがあるから、頭から袋をかぶせて、一つ残らず捕まえて来なさい。」


寺男は言われた通り、荒れ庭に行って隠れていると、どこからともなく、異様なものが七匹、入って来ました。

ふたりはすかさず布袋をかぶせると、中から「ブゥブゥ」と豚の無く声が聞こえました。

二人は布袋を引きずって寺に帰り、用意してあった大がめに押し込め木蓋をしめ、泥で塗り固めてしまいました。


あくる朝、玄宗皇帝から使いがやって来て、上人をお召しになりました。

上人が御殿に上がると、玄宗皇帝は心配そうに言いました。

「天師、今朝方、天文博士が申し出て、昨夜、北斗七星がにわかに夜空から消えてしまったと言う。

これは何か不吉な知らせであろうか?」


上人は腕を組み、厳しい顔つきとなりました。

「昔、魏の時代にけいわく星(火星)が消え失せたとの話はありますが、北斗七星すべてが消えるとは、聞いた事も無い天変。おそらく、人を殺したという無実の罪でとらわれた者がおるため、天帝がお怒りになっておるのではないでしょうか?」 


玄宗は驚き、王婆の息子をすぐに解き放ちました。

上人は、寺に帰ると大かめの蓋を開けました。

すると、豚は一匹一匹飛びはねて、空へと飛んでいきました。


その夜、空に一つ星が現れました。

そして毎夜ひとつずつ、星が現れ、北斗七星が出そろい、玄宗皇帝はホッと胸を撫で下ろしたと言う事です。

      「北斗と豚」


 
 
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